研究課題/領域番号 |
15K09311
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
橋詰 淳 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (00637689)
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研究分担者 |
祖父江 元 名古屋大学, 医学系研究科, 特任教授 (20148315)
勝野 雅央 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (50402566)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 球脊髄性筋萎縮症 / 運動ニューロン疾患 / 女性保因者 / X連鎖劣性遺伝 |
研究実績の概要 |
SBMAは成人男性に発症する遺伝性運動ニューロン疾患で、X染色体に存在するアンドロゲン受容体遺伝子の遺伝子変異(CAGリピート異常伸長)で発症し、下位運動ニューロン障害による緩徐進行性の四肢体幹の筋力低下、球麻痺が主な症状で遺伝子検査により診断が可能である。SBMA動物モデルの解析結果に基づき、テストステロン産生を抑制する薬剤であるリュープロレリン酢酸塩のSBMA患者に対する臨床試験を実施した結果(Katsuno M et al., Lancet Neurol 2010)、疾患修飾療法の治療効果は、発症からより早期の患者であるほど明確に認められる可能性が示唆された。したがって、発症早期、もしくは臨床的な発症前の疾患重症度や病態の進行を反映するバイオマーカーを同定する事は重要と考えられるが、未発症のSBMA患者を同定し研究の対象とすることは、実施可能性の面からも、倫理的な面からも現時点では極めて困難であるため、発症前の男性患者と同様の病態を持つことが想定される女性保因者を対象に、各種バイオマーカーの挙動を検討することは医学的な意義があるものと考えた。本研究の対象は、SBMA女性保因者および健常女性である。検査項目は、血液検査、尿検査、DEXA、呼吸機能検査、MUNE(尺骨神経)、mQMG、運動機能(舌圧、握力、timed 4.6m walking test)、ADLスコア等である。2017年2月末時点で、女性保因者14例および健康被験者12例を組み入れた。SBMA保因者は、健常被験者と比較し、頻回の筋痙攣のエピソードを有するとともに、電気生理学的検査ではMUNE(Motor unit number estimation; 推定運動ニューロン数)の低下、近位筋筋力の低下を認めた。今後、共同研究施設を追加(既に倫理委員会済)したうえで、組み入れ例数をさらに増やす予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画時には、症状が発現していない女性保因者を本研究に組み入れることには大きな困難が伴うことを予想していたが、本研究の概要や目的に関する真摯な説明に対して理解をいただけたこと、また、保因者の父親もしくは息子がSBMA患者であることから、SBMAに対する理解が深く、SBMAに関する研究を推進したいという気持ちが強かったこと、等から、比較的被験者の組み入れはスムースに進んだ。 一方、本研究の除外基準に「将来的に挙児希望がある女性」が設定されていることもあり、SBMA患者の娘の組み入れは一般に困難で、被験者が比較的高齢に偏っている傾向があり、結果の解釈に注意が必要となる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、SBMA患者の母親・娘等に対して本研究の意義等を説明し、参加希望者を募る予定である。また、ポスター等の手段を利用して、健常女性の組み入れも進める予定である。 これまでの中間的解析においても、SBMA保因者は、健常被験者と比較し、頻回の筋痙攣のエピソードを有するとともに、電気生理学的検査ではMUNE(Motor unit number estimation; 推定運動ニューロン数)の低下、近位筋筋力の低下を認めることが示唆されており、引き続き例数を増やして検討することで、本研究から得られる知見を集積し、本年度中に学会報告を行い、英語論文作成を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述のように、本試験への適格保因者の被験者としての組み入れはおおむね順調に進んでいるが、一部の検査が次年度へ持ち越しとなったため次年度使用額が生じた。具体的には、各種血液検査、各種尿検査、X線DEXA検査、呼吸機能検査、電気生理学的検査(MUNE)である。
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次年度使用額の使用計画 |
既に上記被験者の来院日程は平成29年度に予定されており、来院日程に合わせて必要な検査を研究計画書に沿って実施する予定である。
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