研究課題
神経変性疾患に対する疾患修飾療法のトランスレーショナルリサーチにおいて、病態を適切に反映し薬効評価の指標となるバイオマーカーを同定することが必要とされている。本研究では、疾患特異的な複合的臨床評価スケールを開発する。研究対象は、当院へ通院したSBMA患者92例と健常人35例とした。被験者に対して、定量的な筋力評価指標、及び機能評価スケールを用いた評価を実施した。まず、ALSFRS-Rの各サブスコア(球、上肢、体幹、下肢、呼吸)と関連の高い定量的な筋力評価指標(舌圧、握力、%最大呼気流量:%PEF、4.6M歩行試験:4.6MWT、%努力性肺活量:%FVC)を複合機能評価スケールの構成要素として選定した。その5つの構成要素をそれぞれ、健常人の平均値、標準偏差で標準化されたZ-scoreへ変換し、それらを合計し、複合機能評価スケールを作成した。SBMA患者92例のうち、43例は0週時のみ、37例は0週、48週時、12例は0週、48週、96週時で評価が実施された。複合機能評価スケール(Z-score)を用いた評価点数(0週時)は、その5つの構成要素(舌圧、握力、%PEF、4.6MWT、%FVC)とそれぞれ強く相関し、ALSFRS-R総点、SBMAFRS総点とも有意な相関を認めた。48週追跡群(n=49)および96週追跡群(n=12)における複合機能評価スケールのSRMはそれぞれ-0.59、-1.03で、ALSFRS-RのSRM(48週 -0.28;96週 -0.62)やSBMAFRSのSRM(48週 -0.31;96週 -0.72)よりも大きかった。本研究で作成した複合機能評価スケールは、ALSFRS-RやSBMAFRSと比較して、SBMAの病勢の進行をより鋭敏に捉えることが出来ると考えられ、SBMAを対象とする新たな臨床試験において有用な評価指標になりえることが示唆された。
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