研究課題/領域番号 |
15K09312
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
曽根 淳 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座助教 (40513750)
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研究分担者 |
祖父江 元 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任教授 (20148315)
中村 亮一 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (80723030)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 核内封入体 / 白質脳症 / 認知症 / 皮膚生検 / 全ゲノム解析 |
研究実績の概要 |
平成27年度末までに、皮膚生検により合計 46例の孤発性NIID、15例の家族性NIIDを診断した。我々の予測通り、かなりのNIID症例が存在することを裏付ける結果となっている。これらの結果を、日本神経学会、日本神経病理学会、日本認知症学会、日本神経治療学会、日本自律神経学会およびアメリカ神経学会(AAN 2016)にて報告し、皮膚生検がNIIDの診断に有効である事を広く啓発し、NIIDが疑われる症例については、皮膚生検による診断を考慮して頂くように各医療施設に依頼した。これらのNIID症例のデータを解析することによって、NIIDの病態および自然歴の解析を進めており、高齢発祥で、白質脳症を呈し、軽度の末梢神経障害、縮瞳などの自律神経障害を呈する症例が多く存在することが明らかになった。現在、その成果を英文誌に投稿中でる。 これと平行して、NIIDのゲノム解析を進めており、常染色体優性遺伝形式をとるNIID6家系について、次世代シークエンサーを用いたエクソームおよび全ゲノム解析を平成27年度末までに完了した。現在、得られたデータを用いて、連鎖解析、およびSNVなどの解析を進めている。特にこれまでに、マイクロサテライトマーカーを用いた全ゲノム連鎖解析によって、すでに同定している20Mbの候補領域にターゲットを絞りこんで、NIIDの原因遺伝子の解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度末までに、合計46例の孤発性NIID、15例の家族性NIIDが皮膚生検により診断された。我々の予想を超える数の症例が解析できており、引き続き継続する予定としている。 ゲノム解析については、NIID6家系について、全ゲノム解析およびエクソーム解析を今年度中に完了することができており、現在、順次データ解析を進めているところである。すでに、20Mbの候補領域を同定できているため、その領域について集中的に解析を進める予定であるため、結果についても、まもなく得られるものと予測している。
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今後の研究の推進方策 |
現在、NIIDの病態および自然歴の解析結果について、その成果を英文誌に投稿中でるため、それを完了させる。平行して、NIID症例についてもさらに収集を進め、NIIDの病態および自然歴をさらに解析していく。 ゲノム解析については、近年発展が著しい、ロングリードの解析可能な次世代シークエンサーである、Pacific Bioscience 社PACBIO RS II シークエンサーを用いた解析を行うことによって、今までの次世代シークエンサーでは不可能であった1000bpを超えるロングリードによる解析を進めて行く予定である。これらの解析で得られた結果について、NIID患者由来の配列と、正常対象由来の配列、および既にデータベース上に公開されているヒト正常遺伝子配列、SNP配列の情報などゲノムインフォマティクスを活用し、比較検討する事によって、NIIDを引き起こす原因遺伝子を同定したいと考えている。 原因遺伝子を同定できた場合には、原因遺伝子産物に対する抗体を用いた免疫染色にて検討し、全身での発現状況、核内封入体内での存在様式などについて詳細な検討を行う。次に、原因遺伝子を発現させる培養細胞モデルを作成し、遺伝子産物の生理的役割、核内封入体の形成過程、分子機構、発現タンパク質の分布様式、結合様式、毒性等について解析する。 さらには動物モデルの作成、凍結標本からのタンパク質の解析を行い、病態発症に関係するタンパク質あるいは分子機構について、新規治療法も含めて検索する。これらにより、NIID研究、および核内封入体の病理機構解析を飛躍的に発展させ、神経変性疾患一般に広く応用可能な治療法開発へと繋げたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
1月以降に使用したDNA合成の支払いが平成28年度になる。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度より翌年度にかけて予定しているDNA合成への支払いに充当する。
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