研究課題/領域番号 |
15K09314
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高橋 正紀 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (20359847)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 一塩基多型 / パッチクランプ / イオンチャネル |
研究実績の概要 |
骨格筋のイオンチャネル病は、周期性四肢麻痺と非ジストロフィー性ミオトニー症候群とに分けられる。周期性四肢麻痺、中でも低カリウム性周期性四肢麻痺(hypoPP)の原因や病態が十分に解明されていないことから、生理学および遺伝学的手法を用い病態メカニズムの解明を行った。 hypoPPの遺伝的原因は、骨格筋型電位依存性NaチャネルあるいはCaチャネルの電位センサー部位に規則的に配列する塩基性アミノ酸、Argが、中性アミノ酸に置換するものが大部分である。しかしながら臨床的にhypoPPと診断される症例のうち、2/3以上で、これら既知原因遺伝子変異を認めない。それらの症例のほとんどが、家族歴が無く、甲状腺機能も正常である、いわゆる孤発性低カリウム性周期性四肢麻痺である。 甲状腺中毒性低カリウム周期性四肢麻痺において、疾患感受性一塩基多型(SNP)が複数報告されたことから、我々の蓄積する孤発性周期性四肢麻痺の検体についても検討した。すると、孤発性周期性四肢麻痺においても、これらのSNPの遺伝子頻度が、正常対象に比し優位に高いことが明らかとなった。これらのSNPは、周期性四肢麻痺の原因であるKCNJ2遺伝子の近傍に存在することから、病態に直接関与する可能性が高い。 また、遺伝性のhypoPPの症例において、既知遺伝子のArgの変異であるが、同じ塩基性アミノ酸であるLysに置換する変異を見出した。このチャネルの機能について電気生理学的解析を行った。ゲーティングポア電流の軽度の増加が認められており、詳細な解析を継続している。 また、チャネル機能解析を以前から継続していた骨格筋型NaチャネルとClチャネルの両者に変異を有する非ジストロフィー性ミオトニー症候群の症例については、NaチャネルとClチャネルの両者の機能異常が相加・相乗的に寄与し重症化につながっていることが明らかになり、論文報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子解析については想定以上の結果がでている。計画では、サンガーシークエンシングの後にエクソームシークエンスを行う予定であったが、一塩基多型の解析で今後の病態解明につながる結果が得られた。 生理学的解析については、電位センサーのゲーティングチャージが不変の変異のチャネル機能についてデーターが得られてきている。生理学的解析には時間を要するため、想定どおりである。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子解析について、サンガー法、次世代シークエンサによるターゲットリシークエンシングでスクリーニングを行ったうえで、予定通りエクソームシークエンスを行い周期性四肢麻痺および関連疾患の原因遺伝子解析を進めていく。また、今回孤発性低カリウム性周期性四肢麻痺に見いだされた疾患感受性一塩基多型については、予定外であるがさらなる解析を進める 生理学的解析については、計画のKir3.x ファミリーの骨格筋における生理的機能の解析、ゲーティングチャージが不変の変異の機能解析について次年度も継続して行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
費用のかかる遺伝子解析のうち、最も費用を要する次世代シークエンサによるエクソーム解析数が予定より少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度蓄積した検体とあわせて、次年度に一斉に処理し、効率的に解析することを計画している
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