研究課題
骨格筋のイオンチャネル病は、周期性四肢麻痺と非ジストロフィー性ミオトニー症候群に大別される。計画通り、病態が未解明な低カリウム性周期性四肢麻痺(hypoPP)について、生理学的・遺伝学的手法を用い、新たな原因遺伝子の探索、病態メカニズムの解明を行った。さらに、骨格筋の関連疾患や中枢神経のチャネル病についても対象を拡げ研究を行った。遺伝学的検討としては、サンガー法による各チャネル遺伝子の解析に加え、次世代シークエンサによるターゲットリシークエンスやエクソームシークエンスの系を構築し網羅的解析を行った。遺伝性のhypoPPにおいて、既知のArg残基であるものの、同じ塩基性アミノ酸(Lys)に置換する変異を見出した。電気生理学的解析により、チャネルのゲーティングポア電流の増大を認めたことから、ゲーティングポア生成のメカニズムについてあらたな知見を見出した。複数の原因チャネル遺伝子に疾患原性が疑われる変異を見出し、両変異による機能異常が相加・相乗的に重症化に寄与していることを生理学的に示した。同様の症例は網羅的遺解析の普及により今後ますます見出される可能性が高い。さらに、非遺伝性と考えられていた、孤発性周期性四肢麻痺において、周期性四肢麻痺の原因として知られるKCNJ2遺伝子近傍の一塩基多型(SNP)のマイナアレル頻度が、優位に高いことを明らかにし、遺伝的背景が存在することを明らかにした。存在部位から考えると、このSNPが病態に直接関与する可能性が高い。脳のチャネル病のひとつである反復発作性失調症についても研究を拡げ、エクソーム解析で未報告の変異2例を同定した。広義の骨格筋チャネル病でもある筋強直性ジストロフィーの心臓伝導障害について、仏、独、米国との国際共同研究を行い、心筋型Naチャネルのスプライス異常が原因であることも明らかにした。
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