研究課題
脳梗塞ではその病変部位で多くの細胞が壊死に陥り、非可逆的な機能障害を残す。この研究ではアストロサイトに注目し、アストロサイトへの薬物介入を通じて、脳血管保護・脳組織保護・認知症予防・再生療法を目指した脳梗塞の新しい治療戦略を検討することを目的としている。脳梗塞におけるアストロサイトの役割を解析するにあたり、11-13週齢のOKD48マウスの45分間の一過性中大脳動脈閉塞による、マウス局所脳虚血モデルを作成した。OKD48マウスは酸化ストレスが発現するとルシフェラーゼ発光する遺伝子組み換えマウスであり、in vivoイメージングで脳虚血による酸化ストレスを観察することが可能である。マウスの頸動脈よりナイロン糸を挿入し、中大脳動脈起始部を閉塞し、閉塞側の中大脳動脈領域の大脳皮質と基底核に脳梗塞巣の作成を行い、脳虚血12時間後、24時間後、72時間後、7日後の大脳凍結切片を作成した。脳梗塞周辺のアストロサイトの病態関与を解析するため、まず免疫染色により、低酸素ストレスマーカーであるHIF1α、抗酸化ストレス作用のあるGlutathione (GSH)の発現変化を解析した。HIF1α発現は脳梗塞発症12時間後に脳梗塞巣周辺にて顕著に増加し、24時間後に最大となり、以後低下傾向となった。GSH発現は脳梗塞発症12時間後より脳梗塞巣周辺にて増加傾向となり、72時間後に最大となり、以後低下傾向となった。in vivo imagingでの観察で酸化ストレスのマーカーであるnrf2発現は24時間後がピークであり、組織学的解析でニューロンとアストロサイトでnrf2は発現していた。以上より、脳梗塞病態には低酸素ストレスがまず関わり、次いで酸化ストレスが関わり、アストロサイトの関与があることが判明した。
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