研究課題
G蛋白質共役型受容体(GPCR)は様々な細胞内伝達物質の制御に関わるが、研究代表者はこれまで中枢神経系神経細胞に豊富に発現し、恒常的に細胞内cAMPレベルを維持する蛋白共役型受容体GPR3の機能解析を行い報告してきた。本研究の目的は、脳梗塞などの中枢神経障害に対する新規軸索再生療法開発を目指して、まず神経成熟過程におけるGPR3の軸索形成・伸長機能を詳細に解析し、これらの分子基盤を脳虚血・外傷性脊髄中枢神経障害に応用することで、GPR3による軸索再生を基軸とした新規再生療法の可能性を模索することにある。平成27年度では、培養初代海馬神経細胞においてGPR3遺伝子発現を確認した。さらに、ラット海馬神経細胞における内因性GPR3発現が、神経極性形成に促進的に作用する傾向を認めた。平成28年度では、再現性の検討を行い、ラット海馬神経細胞におけるGPR3発現変化が、神経極性形成を有意に促進することを統計学的に証明した。また研究代表者らはこれまでに、小脳顆粒神経細胞に発現するGPR3が、下流のPKA・PI3キナーゼ経路を介して神経細胞生存に寄与することを明らかにしているが、本年度はさらにGPR3による神経極性形成促進効果がPI3キナーゼ経路を介して効果を発揮することを明らかにした。さらに、PI3キナーゼ下流のPI3K-Akt-GSK3β経路が関与することで、最終的にGPR3がCRMP-2リン酸化を抑制し、神経極性形成を促進する可能性を示唆する結果も得られた。
2: おおむね順調に進展している
平成27-28年度では、当初の計画通りGPR3の神経極性に影響を与える機能解析を行ない、そのメカニズムに関しても一端を明らかにすることができた。一方で、海馬神経細胞におけるGPR3発現がシナプス形成へ与える影響とメカニズムに関しては、海馬神経細胞のシナプス形成解析が当初の想定に反してうまく進まず、次年度に持ち越して検討を行うことになった。
平成29年度は、GPR3の神経極性形成に与えるメカニズムに関して下流のシグナル因子の一つとして想定されるCRMP-2リン酸化を中心に、さらに詳細に検討する。また、神経細胞におけるGPR3のシナプス形成への関与、GPR3の新規軸索再生療法への応用についても検討を進める予定である。
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