昨年度の研究においてHSP90阻害剤17-AAGによりp62のSer349およびSer403のリン酸化が抑制されることを明らかにした。今年度は、他のHSP90阻害剤についても解析を行った。その結果、10μMのゲルダナマイシン処理でもSer349およびSer403のリン酸化は抑制された。次に、siRNAによりHeLa細胞のHSP90AA1およびHSP90AB1をノックダウンしp62のリン酸化解析を行った。HSP90AA1またはAB1のいずれかをStealth siRNAでノックダウンした後10μMのMG132で処理し抗p62リン酸化抗体でリン酸化p62の測定をした。その結果、これらのノックダウンではp62のリン酸化は抑制されなかった。次にAA1およびAB1のダブルノックダウンを行った。しかし、この条件下でもリン酸化の抑制は認められなかった。このことから、17-AAGによるp62のリン酸化にHSP90は直接関与していないことが明らかとなった。 そこで、HSF1下流でp62のリン酸化を制御するタンパク質を明らかにするために、17-NHS-ALA-GAを用いゲルダナマイシン結合タンパク質の網羅的解析を行った。17-NHS-ALA-GAカラムを作製し、MG132処理後の細胞抽出液をロードした。そして、SDS-PAGEにより結合タンパク質の検出を行ったが、特異的なタンパク質を同定できなかった。 次に、p62の各ドメインを欠失させた変異体を作製し、Ser349のリン酸化への影響を調べた。p62のPB1ドメイン、ZZドメインやLIRドメインを欠失した変異体ではSer349のリン酸化は起きたが、UBAドメインを欠失した変異体はSer349のリン酸化が起きなかった。このことから、KIRドメインのリン酸化にはUBAドメインが関与することが明らかとなった。
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