研究課題/領域番号 |
15K09327
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
久保 紳一郎 順天堂大学, 医学部, 准教授 (20327795)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | レビー小体 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、レビー小体病(LBD, パーキンソン病、認知症を伴うパーキンソン病、レビー小体型認知症)を病理学的に特徴づける神経細胞体内封入体であるレビー小体の形成機序を解明することである。本疾患では加齢がリスクファクターの一つであり、高齢化社会に伴い、LBDの有病率は増加すると考えられる。現行の治療は患者のQOLを保つのに十分ではなく、その病態解明が急務である。LBDの原因は明らかになっていないが、レビー小体がその発症および進行に関与することは確実であることから、その形成機序を解明することにより効果的な治療法の開発が期待できる。 内在性SNCAの発現が知られているヒト由来の培養細胞(HeLa細胞)にヒトの野生型および変異型GBA, PLA2G6をリポフェクション法により過剰発現させ、toxic gain-of-functionのモデルを作製した。生化学的解析により、いずれの変異型もSNCAの可溶性、膜結合性に変化を及ぼすことが示された。今後は、CRISPRにてGBA, PLA2G6の安定発現系を作製し、長期的経過によるSNCAへの影響を解析する。ヒトの野生型および変異型GBA, PLA2G6のトランスジェニックショウジョウバエを作製し、ショウジョウバエでは内在性のSNCA発現がないことから、SNCAトランスジェニックショウジョウバエとかけ合わせを行った。現在、生体内におけるSNCAの挙動および脂質解析を進めている。ヒト剖検脳を用いたレビー小体形成機序のアプローチとして、LBDとコントロールの剖検脳を用いたimaging MSを計画している。これまでにヒト脳のimaging MSの報告はなく、H27年度はimaging MS法の条件検討を行い、最適条件を確立した。今後は、LBD脳およびコントロール脳の帯状回前部を用いたimaging MSによる解析を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レビー小体病(LBD)モデルを作製することにより、レビー小体形成機序を明らかにするという当初の計画は、おおむね順調に進展している。ヒト培養細胞とショウジョウバエにGBA遺伝子およびPLA2G6遺伝子を導入することは達成され、SNCAの挙動解析の準備は順調と考えられる。マーモセットへの上記遺伝子導入が達成できていないが、哺乳動物個体におけるこれら遺伝子導入によるSNCAへの影響を解析する必要からトランスジェニックマウスを用いることとした。現在、Jackson Laboratoriesよりcryospermの納入待機中である。ヒト脳のimaging MSの条件設定は順調に進んでおり、LBDとコントロールの比較解析を開始する段階に入っている。
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今後の研究の推進方策 |
上記により確立したヒト培養細胞モデル、ショウジョウバエモデル、マウスモデルを用いて、細胞膜脂質の変化をimaging MSを含めたリピドミクスにより明らかにする。同時に、細胞膜脂質の変化がSNCAに及ぼす影響を解明する。この脂質変化が実際のヒト脳においても起きているかを同様のリピドミクスにより検討する。以上によりLBDモデルの確立を目指し、このモデルを用いることにより新たな治療法の開発を試みる。LBDモデルの摂取脂質の調整、LBDモデルを用いた薬物スクリーニングを想定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
上記のヒト培養細胞、ショウジョウバエ、マウスのLBDモデルへの摂取脂質の効果を解析する際に、当初計画より長期にわたりその効果を観察解析する必要があると考えられるため。
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次年度使用額の使用計画 |
脂質組成を調整した培養液、ショウジョウバエおよびマウスのエサの追加オーダーに使用する計画である。また、長期飼育管理のために飼育ケージ等の増設に使用する計画である。観察期間の延長にともない、生化学的解析、リピドミクスによる追加評価も必要となる。
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