研究課題/領域番号 |
15K09331
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
上山 盛夫 大阪大学, 医学系研究科, 特任助教 (20386593)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 筋萎縮性側索硬化症 / 前頭側頭葉変性症 / 異常伸長リピートRNA / リピート関連非ATG翻訳 / ショウジョウバエ |
研究実績の概要 |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)と前頭側頭葉変性症(FTLD)は、難治性の神経変性疾患であり、治療につながる病態解明が切望されている。近年、家族性および孤発性ALS/FTLD患者の最も高頻度な発症原因としてC9ORF72遺伝子非翻訳領域にGGGGCCリピートの異常伸長が発見された。この異常伸長リピート由来のRNAはリピート関連非ATG翻訳(repeat-associated non-ATG translation: RANT)により凝集性を持つジペプチドリピート(DPR)蛋白質として翻訳されることが報告された。さらに、DPR蛋白質が神経変性を引き起こすことから、RANTの関連分子群(マシナリー)を含むメカニズムの解明は、ALS/FTLDの病態解明につながると考えられるが、RANTメカニズムは未解明である。 本研究では、RANTメカニズムの解明を目的とし、DPR蛋白質を発現するC9ALS/FTLDモデルショウジョウバエを用いて、複眼神経変性を指標として遺伝学的スクリーニングによりRANTマシナリーの同定を試みた。具体的には、DPR蛋白質を発現するC9ALS/FTLDモデルショウジョウバエは強い複眼神経変性を呈するが、この表現型に対して新たな遺伝子過剰発現やノックダウンが効果を及ぼすかどうかを検討した。 今年度は、GGGGCCリピートに結合することがin vitroで確認されているRNA結合蛋白質について候補遺伝子スクリーニングを行った。それぞれの遺伝子について過剰発現もしくはノックダウン系統を利用してスクリーニングを行ったところ、数遺伝子でC9ALS/FTLDモデルショウジョウバエの強い複眼神経変性の改善もしくは増悪が見られた。さらにそれらのうちの1つの遺伝子について、DPR蛋白質の発現および局在に変化が見られるかどうかを免疫組織染色により検討したところ、発現量が変化していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の候補遺伝子スクリーニングでは、modifier効果を示す遺伝子が発見できなかったが、今年度のスクリーニングでは数遺伝子を発見することができた。さらに、そのうちの1つの遺伝子についてはRANTへの影響もDPR蛋白質に対する抗体を用いた免疫組織染色により確認することができたため、本研究申請時の研究計画通りに進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までにRANTへの影響まで確認できた1遺伝子について、RANTの関与が想定されている他のRNAリピート病の発症病態にも関わるかどうかを検討する。具体的には、複眼変性を呈する他のリピート病モデルショウジョウバエ、SCA31(TGGAAリピート)およびFXTAS(CGG)モデルショウジョウバエに対して、遺伝学的手法によりこの遺伝子を導入し、複眼変性に対するこの遺伝子の効果を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ショウジョウバエを用いた遺伝学的スクリーニングにおいて、当初は全ゲノムの遺伝子を対象とし、染色体部分欠失および突然変異体系統を用いて行う予定であったが、候補遺伝子スクリーニングに変更したために、多くの系統を購入する必要性がなくなり、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今回生じた次年度使用額で現在故障して使用不能になったインキュベーターの代替え機を一台購入する。それ以外の残りと翌年度分の助成金は当初の計画通り、ショウジョウバエの突然変異体系統の購入、使用中のショウジョウバエ系統の維持、研究に必要な抗体等の試薬、ピペットチップやチューブ類などのプラスチック器具に使用する。
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