研究課題
筋萎縮性側索硬化症(ALS)と前頭側頭葉変性症(FTLD)は、難治性の神経変性疾患であり、治療につながる病態解明が切望されている。近年、家族性および孤発性ALS/FTLD患者の最も高頻度な発症原因としてC9ORF72遺伝子非翻訳領域にGGGGCCリピートの異常伸長が発見された。驚くべきことに、この異常伸長リピート由来のRNAはリピート関連非ATG翻訳(repeat-associated non-ATG translation: RANT)により凝集性を持つジペプチドリピート(DPR)蛋白質として翻訳されることが報告された。さらに、DPR蛋白質が神経変性を引き起こすことから、RANTの関連分子群(マシナリー)を含むメカニズムの解明は、ALS/FTLDの病態解明につながると考えられるが、RANTメカニズムは未解明である。本研究では、RANTメカニズムの解明を目的とし、DPR蛋白質を発現するC9ALS/FTLDモデルショウジョウバエを用いて、in vivoでの遺伝学的スクリーニングによりRANTマシナリーを同定を試みた。今年度は、ATG依存性翻訳やmRNA品質管理に関わる遺伝子について、昨年度に引き続き候補遺伝子スクリーニングを行った。それぞれの遺伝子について、複数の変異体を用いてスクリーニングを行ったが、スクリーニングを行った全ての遺伝子でC9ALS/FTLDモデルショウジョウバエの複眼神経変性の改善もしくは増悪効果は見られなかった。また、昨年度までに同定したmodifier効果を示す遺伝子について、複眼変性を呈する他のリピート病のSCA31モデルショウジョウバエに対して複眼変性に対する効果を検討したところ、C9ALS/FTDモデルショウジョウバエに対してと同方向性のmodifier効果を示した。
3: やや遅れている
C9ALS/FTLD患者の病理学的解析から、DPR蛋白質がALS/FTLDの共通病態であるTDP-43の凝集・蓄積を引き起こすと考えられており、このメカニズムを明らかにすることがALS/FTLDの共通発症病態メカニズムの解明につながる。そこで、当初の計画においてTDP-43の凝集・蓄積に対するDPR蛋白質の影響を検討する予定にしていた。しかしその検討ができていないから。
当初の計画にあるTDP-43の凝集・蓄積に対するDPR蛋白質の影響を検討する。具体的には複眼変性を呈するTDP-43発現ALS/FTLDモデルショウジョウバエに遺伝学的手法によりDPR蛋白質を発現させ、複眼変性に対する効果を評価する。また、TDP-43の凝集・蓄積の変化を免疫組織染色およびWB解析により検討する。
ショウジョウバエを用いた遺伝学的スクリーニングにおいて、当初は全ゲノムの遺伝子を対象とし、染色体部分欠失および突然変異体系統を用いて行う予定であったが、候補遺伝子スクリーニングに変更したために、多くの系統を購入する必要性がなくなり、次年度使用額が生じた。今後の使用計画は、ショウジョウバエの突然変異体系統の購入、使用中のショウジョウバエ系統の維持、研究に必要な抗体・試薬、ピペットチップやチューブ類などの消耗品の購入に使用予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
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