研究課題/領域番号 |
15K09333
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
森 雅裕 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (70345023)
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研究分担者 |
鵜沢 顕之 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (10533317)
日和佐 隆樹 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (30260251)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 多発性硬化症 / talin-1 / 抗talin-1抗体 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
これまでの検討で多発性硬化症(MS)患者血清を用いた検討でMSにおいて細胞の接着にかかわるタンパクであるtalin-1に対する自己抗体が認められ、その抗体価は正常対称より有意に高値であることを報告してきた。そこで、われわれはまずその自己抗体の産生機序として、血清中に可溶性のtalin-1が過剰に出現していることにより反応性に自己抗体が産生されるという機序を想定し、それを確認するため以下の実験を行った。 抗talin-1抗体上昇を報告したときに用いたMS40人(男:女=9:31、年齢中央値39.5歳)と健常者43人(男:女=15:28、年齢中央値47.0歳)の血清を用いた。検体は-80℃で保管されていたものである。これらを用いてELISA(Enzyme-linked immunosorbent assay)法により血清中の可溶性talin-1濃度を測定した。 その結果、血清中可溶性talin-1濃度はMSでは中央値(四分位範囲)で193.7(97.0)pg/mlで健常者の158.6(69.8)pg/mlより有意に高値を示した(P=0.0011)。また、MS急性期と寛解期の血清での比較ではMS急性期で寛解期より血清可溶性talin-1は高値を示した(P=0.033)。さらに急性期血清可溶性talin-1濃度は髄液タンパクと相関を認め、再発後と再発前の重症度の変化とも相関を認めた。ただし、血清可溶性talin-1濃度は血清抗talin-1抗体とは相関を認めなかった。以上より血清可溶性talin-1濃度はMS急性期のマーカーの候補と考えられるが抗talin-1抗体の産生には直接は関与していないと想定され、さらなる抗talin-1抗体産生メカニズムの解明に関する検討が必要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに抗talin-1抗体が多発性硬化症患者血清中に認められることを見出し、多数検体を用いた検証試験で多発性硬化症患者群では健常対照群や疾患対照群に比べ有意に高い抗talin-1抗体価を示した。さらに今回、その産生機序に迫る検討を行ったが、関与を想定した可溶性talin-1は多発性硬化症群で健常対照群に比し有意に高い値を示したものの抗talin-1抗体とは相関がなく、産生機序の解明には至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後、抗talin-1抗体産生機序の解明の問題は継続して検討して行きたい。具体的には髄液中の可溶性talin-1を測定してみたい。さらに今後、予定していた多発性硬化症の動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)マウスに対するtalin-1、抗talin-1抗体の投与実験を行い、病態にどのように関与しているのかについて迫りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本来予定した多発性硬化症患者およびEAEから得られた各種細胞からのサイトカイン産生の検討、フローサイトメトリー及び免疫細胞化学によるtalinの局在の確認の代わりに抗talin-1抗体産生機序の解明に関する検討を行ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度、多発性硬化症動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎モデルに対するtalin-1、抗talin-1抗体の投与とともに本年度予定されていた多発性硬化症患者およびEAEから得られた各種細胞からのサイトカイン産生の検討、フローサイトメトリー及び免疫細胞化学によるtalinの局在の確認を行うために、使用する予定である。
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