研究課題
COQ2遺伝子の複合ヘテロ接合性変異が同定されている家族性多系統萎縮症(multiple system atrophy,以下MSA)患者1例,ヘテロ接合性変異が同定されている孤発性MSA患者1例(上記2例をあわせて,COQ2変異有MSA患者とする),変異が同定されていない孤発性MSA患者6例(COQ2変異無MSA患者)と健常対照者6例,型14例の血漿検体を対象にCE-TOFMSおよびLC-TOFMSによるメタボローム解析を行った.CE-TOFMSはカチオンモード,アニオンモードで測定を行い,ライブラリデータベースに登録されている物質を対象に解析し,168(カチオンモード100,アニオンモード68)のピークが検出された.LC-TOFMSはポジティブモード,ネガティブモードで測定を行い,98(ポジティブ45,ネガティブ53)のピークが検出された.得られた255ピークについて,ライブラリ情報から候補化合物が同定され,それぞれの化合物について相対面積比の算出を行い,群間で比較を行った.群間の多重検定で統計学的な有意差を持つ化合物は検出できなかったが,化合物のアノテーションを詳細に検討したところ,酸化ストレスに関連する化合物において,COQ2変異有MSA患者,COQ2変異無MSA患者,健常対照者の順に変化しているものが多い傾向が指摘された.COQ2遺伝子はコエンザイムQ10を生合成する酵素であり,コエンザイムQ10は酸化ストレスに関連する物質であることから,COQ2変異無MSA患者においても,何らかの原因で体内のコエンザイムQ10が低下しているのではないかという仮説が考えられた.しかし,今回のメタボローム解析では,もともとコエンザイムQ10の評価はできないので,今後の課題とした.
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り,メタボローム解析を行い,バイオマーカーの候補物質を得ることができた.
バイオマーカー候補を血漿のコエンザイムQ10濃度に絞って,多数のMSA患者・対照例で測定し,検討する.
すべて 2015
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Ann Clin Transl Neurol.
巻: 2 ページ: 417-426
10.1002/acn3.185