研究課題
昨年度,COQ2変異を持つ多系統萎縮症(MSA)患者,COQ2変異を持たないMSA患者,健常対照者の血漿のメタボローム解析を行い群間比較をしたが,群間差が有意な化合物は同定できなかった.しかし,酸化ストレスに関連した化合物では,COQ2変異を持つMSA患者,COQ2変異を持たないMSA患者,健常対照者の順に変化している傾向があった.そこで今年度は,メタボローム解析の解析対象外だった血漿コエンザイムQ10(CoQ10)濃度を測定することとした.MSA患者44人と健常対照者39人の平均血漿CoQ10濃度を比較して,患者群0.51μg/mL(標準偏差0.22),健常対照群0.72μg/mL(標準偏差は0.42)と患者群が有意に低かった.病型別では,小脳運動失調型26人では0.58μg/mL(標準偏差0.19)、パーキンソン症状型18人では0.49μg/mL(標準偏差0.26)だった.血漿CoQ10濃度と患者の有病期間,歩行状態は関連しなかった.血漿CoQ10濃度,年齢,性別,COQ2遺伝子変異の有無を独立変数として多変量ロジスティック回帰分析を行ったところ,血漿CoQ10濃度だけがMSAの発症と有意な関連を示した.患者群と健常対照群からCOQ2遺伝子変異がある例を除外しても,血漿CoQ10濃度とMSAの有意な関係は維持された.以上のことから,血漿CoQ10濃度はCOQ2遺伝子変異と独立してMSAと関連することが示された.ただし,患者群と健常対照群で血漿CoQ10濃度のオーバーラップがあり,診断的な意義は乏しい.また,疾患特異的かどうかは検討課題である.また,経時的な変化はまだわかっていない.
2: おおむね順調に進展している
多系統萎縮症のバイオマーカーとして血漿中コエンザイムQ10を同定した.
引き続き新たなバイオマーカーを検索する.また,血漿コエンザイムQ10濃度と自然歴,臨床的特徴について検討する.臨床試験として,COQ2変異を持つ多系統萎縮症患者に対してコエンザイムQ10投与を行い,その安全性と薬物動態,臨床的な所見について検討する.
特になし.
少額であり消耗品にあてる.
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件)
Cerebellum
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