研究課題
これまでにCOQ2変異を持つ多系統萎縮症(MSA)患者,COQ2変異を持たないMSA患者,健常対照者の血漿に対してメタボローム解析を行い,群間で統計学的に有意な分子は見いだせなかったものの,生物学的パスウェイの検討において,酸化ストレスに関連した分子では,COQ2変異を持つMSAの患者,COQ2変異を持たないMSAの患者,健常対照者の順に変化の傾向を認めた.この知見を背景に,MSA患者と健常対照者の血漿中CoQ10濃度を比較して,COQ2変異を持たないMSA患者においても有意に低下していることを報告した(Mitsui J et al. AMA Neurol. 2016 Aug 1;73(8):977-80).同様の変化は,血清,脳脊髄液,剖検小脳組織でも独立して報告されており,MSAのバイオマーカーの一つとして確立したと言える.また,COQ2変異を持つ家族性MSA患者に対して,高用量のユビキノールを投与する臨床試験を行い,脳酸素消費量が約30%改善したことを報告した(Mitsui J et al. Cerebellum. 2017 Jun;16(3):664-672).以上より,CoQ10の相対的な欠乏がMSAの発症と関連するのではないかと考えている.それでは,CoQ10の相対的な欠乏が,どのように病態機序と関連するのだろうか.病態機序との関連を深く検討するため,COQ2変異を持つMSAの患者,COQ2変異を持たないMSAの患者,健常対照者の血球細胞からiPS細胞を樹立し,神経細胞やグリア細胞へ分化させた細胞系を確立した.この細胞モデルに対して,グルコースフリー培地におけるアポトーシスマーカーや酸化ストレスマーカーの評価,CoQ10投与時のそれらの評価を行った(論文準備中).
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Cerebellum
巻: 16 ページ: 664-672
10.1007/s12311-017-0846-9.
Journal of the Neurological Sciences
巻: 381, Suppl ページ: 889-890
10.1016/j.jns.2017.08.2504