研究課題
脊髄小脳失調症31型(SCA31)は日本人に特有かつ高頻度に存在する常染色体優性遺伝性神経変性疾患で、小脳プルキンエ細胞の選択的障害を来す。その原因は2つの遺伝子BEANとTK2が共有するイントロン内に5塩基リピート(TGGAA)nが存在することであるが、両遺伝子が2方向に転写されるためRNAの(UGGAA)nと(UUCCA)nが病態の根本にある。本研究ではTK2からの産物(UUCCA)nに焦点を当て、自作(UUCCA)n過剰発現マウスを完成させ、①(UUCCA)n結合蛋白「F」が関与する異常RNA代謝の解明と、②(UUCCA)nと蛋白Fの結合阻止による治療法探索、③(UUCCA)n翻訳蛋白が関与する病態の解明を行う。成果が上がればSCA31のみならず、類似する多数の非翻訳領域リピート伸長病の病態と治療法解明に役立つ可能性がある。平成27年度はRNA(UUCCA)nに結合する蛋白を介したSCA31の病態解明について、強力なプロモーターを用いて(UUCCA)nを過剰発現させたTgマウスを樹立させた。その結果、年度最終段階で軽度の行動異常をTgマウスに認めた。引き続き、その異常が確かであるかの解析を進めている。また、RNA発現解析については、生後6か月のマウスについて定量的RT-PCRを行い、導入遺伝子の発現を確認し、FISH法などでRNA fociの存在と、蛋白FとRNA fociとの共局在を確認した。変異ペプチドリピートが関わる病態については、 変異ペプチドリピートに対するモノクローナル抗体を共同開発し、患者脳での免疫組織化学を行ったところ、異常な構造物の形成を確認した。
1: 当初の計画以上に進展している
モデルマウスの症候が確認でき、予想以上に進展した。
計画通り研究を行う。
マウスの生育の関係などから当初初年度に予定したRNAの発現解析を次年度に進めるころにした。このため、費用を移行させた。
行動解析を行ってから、マウスの脳を用いて発現解析を行う。解析の時期は入手が可能となった時期に適宜行う。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件)
JAMA Neurology
巻: 72 ページ: 797-805
10.1001/jamaneurol.2015.0610.