研究課題/領域番号 |
15K09337
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
犬塚 貴 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (50184734)
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研究分担者 |
木村 暁夫 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (00362161)
矢野 竹男 三重大学, 地域イノベーション学研究科, 教授 (00569197)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 抗血管内皮抗体 / 自己免疫介在性脳炎 / 血液脳関門 |
研究実績の概要 |
本年度、ヒト大脳微小血管内皮培養細胞(HBMEC)を用いた免疫染色により、中枢神経ループス患者20例の血清中に存在する抗血管内皮抗体の検出を試みた。その結果、11名の患者血清でHBMECに対する染色性を認めた。この11名の患者血清を用いて、同じHBMECを抗原とする免疫沈降を行い、質量分析により認識抗原蛋白の同定を行った。その結果、Dihydrolipoyllysine-residue acetyltransferase component of pyruvate dehydrogenase complex, mitochondrial (DLAT)とProteasome activator complex subunit 3 (PSME3)を同定した。DLATは、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体(PDC)の中心的な触媒作用をもつ分子であり、PDC-E2とも呼ばれている。PDC-E2は、原発性胆汁性肝硬変で高率に陽性となる抗ミトコンドリアM2抗体の標的抗原として知られている。一方、PSME3はプロテアソーム活性化因子であるが、現時点においてこれらの抗原のHBMECにおける役割は明らかにされていない。また、同じ手法を用い視神経脊髄炎(NMO)の患者より補体成分のC1qに対する自己抗体を検出した。その後、ELISA法を用い、15名のNMO患者、25名の自己免疫性脳炎患者、13名の多発性硬化症患者、15名の健常者の血清中の抗C1q抗体価を測定した。結果、NMO患者における急性期の抗C1q抗体価は、その他神経疾患患者および健常者と比較し有意に高値であった。また、その抗体価は、血液脳関門(BBB)の透過性の指標である髄液/血清アルブミン比と正の相関関係を示したことから、NMOの急性期にみられるBBBの破綻と抗C1q抗体が、関連している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度確立した、抗血管内皮抗体の検出ならびに認識抗原蛋白の同定に関わるシステムを用い、中枢神経ループスおよび視神経脊髄炎患者より抗血管内皮抗体を検出し、その認識抗原蛋白を同定することができたため、進行状況は概ね順調と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度同定した、抗血管内皮抗体の標的抗原蛋白の大脳微小血管内皮細胞における役割の解明と、抗血管内皮抗体の産生機序ならびに大脳微小血管内皮細胞と血液脳関門に及ぼす影響につき検討する予定である。特にC1qに関しては、大脳微小血管内皮細胞においてwnt/beta-catenin signalingを介し、claudinの発現に関与しているという報告があり (Naito et al. Cell 2012; 149: 1298-1313)、抗C1q抗体がこれらのシグナルならびにclaudinの発現に影響を及ぼすか検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
質量分析に用いる費用として当初500,000を計上していたが、解析に回す前の免疫沈降の行程において、特異的なバンドが予想してよりも得られなかったため、質量分析費用が、当初の予定よりも少なくなりました。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は、免疫沈降法の手法の改良や多くの患者血清を対象にすることにより、より多くの質量分析に回すためのバンドの検出が可能と考えられるため、得られたバンドの解析費用として使用する予定です。
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