研究課題
多発性硬化症(MS)は中枢神経系(CNS)にオリゴデンドロサイト障害である脱髄を来す疾患である。一方視神経脊髄炎(NMOSD)は、MSの類縁疾患とされていたが、病態が異なりアストロサイトが一次的に障害される疾患である。MSとNMOSDの治療法が異なるため両疾患の鑑別診断が重要であるが、しばしば鑑別診断に苦慮する。これまで我々はCNSでアストロサイト特異的に代謝される酢酸に着目し、トレーサー(11C-酢酸)を利用し、positron emission tomography (PET)にてMSおよびNMO患者におけるアストロサイトの機能障害を生体内にて画像化する臨床研究を遂行してきた。その結果MS脳ではアストロサイトの代謝活性が亢進していることを初めて明らかにした(Takata et al. PLoS ONE 2014)。またこの研究から11C-酢酸PETの取り込みと認知機能障害に相関があることが示唆された。MSの新規疾患修飾薬(DMD)が複数使用可能となり、運動障害からみた予後は各段に改善したが、認知機能障害が患者QOLの観点から重要になってきている。以下の3つの検査、1)MS/NMOの高次脳機能評価法としてBRBN、2)頭部MRI、3)11C-酢酸PETを施行し、疾患鑑別と認知機能障害の評価に役立つ画像バイオマーカーとしての確立を目指す。中本研究助成期間の3年間で(2018年 3月末時点)健常者 10名、MS患者 11名、NMOSD 患者12名の検査を遂行した。その結果MS脳ではアストロサイト代謝の亢進が亢進しており、NMOSD脳では逆に低下していることが判明した。このことは生体内イメージとして初めてそれぞれの病態が異なることを示したものであり、また両疾患の鑑別疾患のための画像バイオマーカーとしてもその根拠を示す臨床的に極めて重要な発見である。
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