研究課題/領域番号 |
15K09340
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
重藤 寛史 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (50335965)
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研究分担者 |
山口 浩雄 九州大学, 大学病院, 講師 (00701830)
上原 平 九州大学, 大学病院, 助教 (30631585)
橋口 公章 九州大学, 大学病院, 講師 (80448422)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | てんかん / ネットワーク / グリア / 海馬 / 脳磁図 |
研究実績の概要 |
従来我々が行ってきた方法により胎生18日に子宮壁外から液体窒素で冷却したプローベを子宮壁越しに胎児両側半球に圧接して両側大脳半球に冷却損傷を与えることにより,出生後7週前後から自発海馬てんかんを発症してくる皮質異形成モデルラットを作製した.自発発作にグリア細胞がどのようにかかわっているかを検討するために,出生4週と10週のモデルラットにGFAP, Iba-I, AQP4の染色を行った.その結果GFAP, Iba-Iは10週目でも亢進がみられなかったのに対し,AQP-4で発現亢進を認めた.我々のこれまでの研究では,Cx43の染色が4週,10週とも亢進しており,今回の結果と合わせて考察すると,GFAPで有意な差がないのでアストロサイト自体は増加しておらず,一方GFAPで染まりにくい足突起が増加して,その結果として足突起に多く存在するCx43やAQP4の染色が亢進しているのではないかと考えられた.また,Iba-I の亢進がみられない点から,ミクログリアが活性化するほどの細胞障害は生じていないと考えられた. Cxの亢進がどのように影響しているかを検証するためにコンディショナルノックアウトの手法を用いて,アストロサイトのCx43を脱落させるモデルを作成を試み,アストログリア特異的にCx43 をノックアウトするGLAST-CreERKI/+;Cx43flox/flox マウス(Cx43 コンディショナルKOマウス )を樹立した.このマウスにタモキシフェンを投与し,大脳,海馬,小脳でCx43 の発現を免疫染色で確認したところ目的どうりにCx43 がノックアウトされていることを確認した. てんかん患者において,皮質海馬の異常なネットワークが形成されていると仮定して,音刺激により誘発された脳磁界が側頭葉患者と健常対象でどのように異なるか,データを集積している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自発発作を生じるラット凍結病変モデルを対象としてグリア関連機能がてんかん発症にどのように関与しているかを引き続き検証している. てんかん患者の臨床データ,脳磁図データの集積を行っている.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,自発発作を生じるラット凍結病変モデルを対象としてグリア関連機能がてんかん発症にどのように関与しているかを免疫染色を用いた手法で引き続き検証する.グリアネットワークを介してシンシチウムを形成しているグリアネットワークがてんかん発症にどのように関与しているかを調べるために,今回樹立したコネキシン43ノックアウトマウスを用いて検証を行っていく.また,マウスでも長時間ビデオ脳波モニタリングができるようにシステムを作成している.これに加え,実際のてんかん患者の臨床データ,画像データ,脳磁図計測データを蓄積している.
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次年度使用額が生じた理由 |
皮質異形成モデルの安永した作製には技術を要するため,当初予想していたより時間がかかり,モデルの数が少なく,免疫染色に要する抗体の量が少なかったため,次年度に配分した.また,患者情報の蓄積には当初の予定より時間がかかるため,次年度以降への予算を配分した.
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次年度使用額の使用計画 |
皮質異形成モデルを安定して作成し,今年度測定できなかった抗体を用いて免疫染色を行っていく.てんかん患者の臨床データ,画像データ,脳磁図データに加え,患者から摘出したてんかん原性部位の組織の蓄積を今後も続けていく.
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