研究課題/領域番号 |
15K09342
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
立石 貴久 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (50423546)
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研究分担者 |
山崎 亮 九州大学, 医学研究院, 准教授 (10467946)
真崎 勝久 九州大学, 医学研究院, 助教 (90612903) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 筋萎縮性側索硬化症 / 変異SOD1トランスジェニックマウス / ミクログリア / マクロファージ |
研究実績の概要 |
私たちは、神経難病である筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態機序解明と新たな治療標的探索を目的とし、家族性ALSの疾患モデルマウスの変異SOD1トランスジェニックマウス(mSOD1-Tg)について組織学的解析を行なってきた。H28年度は同マウスと中枢マクロファージ(=ミクログリア)と末梢血由来マクロファージを区別できる通称red-greenマウスとを交配し、mSOD1-Tgマウスにおける中枢・末梢マクロファージの動態を観察した。その結果、mSOD1-Tgマウスでは疾患末期まで脊髄における末梢血マクロファージの浸潤は少数にとどまり、主に中枢ミクログリアの著明な活性化を認めた。一方末梢神経においては、発症前から末梢マクロファージの浸潤を認め、何らかの機序を介した病態への関与が示唆された。次に我々は、末梢マクロファージの末梢神経への浸潤を阻止すべく、マクロファージの遊走因子(ケモカイン)受容体の一つ、CCR2欠損マウスとmSOD1-Tgマウスとを交配し、臨床経過を観察した。その結果、驚くべきことに、末梢神経への末梢マクロファージの浸潤は著明に抑制したのに、疾患進行は早まってしまうという予想とは逆の結果を得た。また、通常mSOD1-Tgマウス末梢神経でも変異SOD1蛋白の蓄積は見られるが、CCR2欠損マウスではその蓄積が多く認められた。この結果は、末梢血マクロファージが異常蛋白を貪食することで神経保護的に関与している可能性を強く示唆するものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで知られていない知見を、世界で初めて開発した我われ独自の解析方法で発見した。今後は同マウスの解析と、ALSの治療法開発につながるような研究を継続したい。
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今後の研究の推進方策 |
今回得られた結果では、末梢血マクロファージは疾患保護的に働いていることが示唆されたので、末梢血マクロファージの機能修飾による疾患進行抑制薬の開発につながる研究を継続する。具体的には、例えば同マウスの末梢血マクロファージを増やす治療を行ったり、それらのマクロファージが末梢神経浸潤後にどのように病態に関与しているか解析する。
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