研究課題
HTLV-1のマイナス鎖にコードされるHTLV-1 bZIP factor(HBZ)は発がん及び慢性炎症形成の原因遺伝子であるが、その塩基配列には2つの型が存在し、サブグループ A型を持つ感染者はB型を持つ感染者よりHAM発症リスクが約2倍高いことが報告されている。そこで本研究では、ウイルス型特異的HBZの標的遺伝子構成の差を明らかにすることでHAM発症に関連する治療標的を同定し、その病因的意義の解明と新規治療薬開発につながる研究シーズの発掘を試みた。テトラサイクリン遺伝子発現調節システムを用いて、ヒトCD4陽性T細胞中で各ウイルス型特異的HBZにより発現誘導される遺伝子を網羅的に同定した結果、HBZの標的遺伝子の誘導効率にサブグループ間で明らかな差があること、HBZが多種多様なnon-coding RNAを強力に発現誘導することを見出した。さらに、感染者の臨床検体を用いてHBZおよびその標的遺伝子の動態を検討したところ、末梢血単核球(PBMC)におけるHBZ蛋白発現量に検体間で大きな差があること、全てのHAM患者および無症候性キャリアーで抗HBZ抗体が検出されるが、検出頻度は約10-16%と他のHTLV-1関連ウイルス蛋白質(90%以上)に比較して著しく低いこと、PBMC中のHBZ mRNA発現量とHBZ蛋白発現量、血漿中の抗HBZ抗体価との間に有意な相関が認められないことが明らかになった。HBZによる発現誘導効率がウイルス型により異なる標的遺伝子の中には、多くの未報告の遺伝子のほかにHAM患者生体内で病態に伴って変動する細胞性因子が含まれていたことから、HAMの新規治療標的が含まれる可能性があり、さらなる解析を進めている。
すべて 2017 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Virology Journal
巻: 14 ページ: 234
10.1186/s12985-017-0902-6.
Leukemia Research
巻: 61 ページ: 18-24
10.1016/j.leukres.2017.08.006.
巻: 14 ページ: 130
10.1186/s12985-017-0802-9.
http://www.kawasaki-m.ac.jp/microbiology/info.html