研究実績の概要 |
本年度は、組織所見が軽微な抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎の生検筋19検体と正常コントロール筋8検体を次世代シーケンサーを用いて発現遺伝子解析をした。RNA-seqをRで計算した結果、FDR < 0.01の遺伝子は2140個存在。 抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎の組織では、MDA5/IFIH1のmRNA量はコントロールと比して20倍に上昇していた。皮膚筋炎で発現上昇するKEGGリストの上位5は、Antigen processing and presentation, Focal adhesion, Protein processing in endoplasmic reticulum, Phagosome, Regulation of actin cytoskeletonであった。また、皮膚筋炎で発現低下しているKEGGリストの上位は、Oxidative phosphorylation, Cardiac muscle contraction, Ribosome biogenesis, Glycolysisであった。 個別解析では、Type1 IFMの下流にある遺伝子をふくめinnate immunityに関係する遺伝子の発現亢進を認めた。また、筋萎縮関連遺伝子について、MDA5抗体陽性筋炎と他の特異抗体陽性筋炎とで組織発現と比較を行うと1)萎縮初期に高値、萎縮の進行に伴い低下する遺伝子として5種の筋萎縮関連遺伝子(p<0.01), 2)萎縮初期高値、萎縮の進行でさらに亢進する遺伝子として4種の筋萎縮関連遺伝子(p<0.01)が同定された。本年度の検討で、抗MDA5抗体陽性筋炎の筋組織では、炎症細胞浸潤のない組織変化が軽微な段階からinnate immunity関係の遺伝子発現や、筋壊死再生がないにもかかわらず筋萎縮に関係する遺伝子の有意な発現の変化がおこっていることが明らかになった。
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