研究課題/領域番号 |
15K09351
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
井内 盛遠 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30532600)
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研究分担者 |
松本 理器 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00378754)
麻生 俊彦 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50397543)
國枝 武治 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60609931)
池田 昭夫 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90212761)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | てんかん / 低周波活動 / 脳内ネットワーク / 機能的MRI |
研究実績の概要 |
1) てんかん焦点における広域周波数脳波解析を用いた低周波活動の記録解析:てんかん外科手術目的で頭蓋内電極を慢性留置した難治部分てんかん患者を対象として、標本化周波数 1000-2000 Hz、時定数 10秒で皮質脳波を記録し、視察及び時間周波数解析によって低周波活動の時間・空間的な出現様式の解析を行った。てんかん発作発現時には、低周波活動であるDC電位(グリアの関与が示唆)と高周波律動 (HFO:ニューロンの高頻度発火、介在ニューロンの活動を反映)の両者が、てんかん焦点の中核領域で認められ、DC電位がHFOにしばしば先行すること、この特徴が内側側頭葉てんかんと比較して新皮質てんかんで顕著であることを明らかにした(国際学会発表Daifu et al., 2016)。発作間欠期においても、同様にDC電位様の低周波活動とHFOの相互作用について記録解析を開始した。2例の解析結果より、低周波活動とHFOの相互作用が、発作間欠期においても認められること、空間的分布は発作起始部に概ね合致していることを示した(国内学会発表大封ら、2015年)。頭蓋内電極留置期間中に、頭皮上に少数の電極を貼付して睡眠段階を同定し得た患者において、覚醒・睡眠段階で分類した皮質脳波を用いて異周波数間結合の解析を開始した。高周波数帯域の瞬時振幅と低周波数帯域の瞬時位相の相関(phase-amplitude coupling)の解析結果から、大脳皮質において徐波睡眠期に低周波と高周波数帯域の異周波数間のクロストークが強まることを示した。 2) 機能的MRI(fMRI)を用いた記録解析:てんかん外科手術の前に施行したfMRIで予備解析を行った。脳波と同時計測したfMRIによって、てんかん性放電の出現に一致して、てんかん焦点領域及び関連するネットワークにBOLD反応を認めうることを示した。安静時fMRIの予備解析を行い、本研究における、てんかん性ネットワーク可視化の具体的な方法(seed-based法および独立成分分析法)を決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
てんかん焦点においてDC電位の出現様式を、HFOと比較検討することによって、てんかん病態においてグリアとニューロンが密接に関連しつつ、時系列の差から異なる役割を有す可能性を示した。発作時DC電位がHFOに先行する傾向は、内側側頭葉てんかんと比較して新皮質てんかんで顕著であった。異周波数間結合の解析を開始し、低周波活動と高周波数の活動の間にクロストークがあること、覚醒・睡眠に伴って変容があることを示した。大脳皮質領域間のネットワーク解析に応用可能な異周波数間結合の具体的な解析方法の決定、解析データの準備を終えており、予備解析を行ったfMRIとあわせて、次年度以降に予定している大脳皮質領域間のネットワーク解析の準備がおおむね完了した。
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今後の研究の推進方策 |
1) てんかん焦点における広域周波数脳波解析:昨年度に開始した、てんかん焦点における低周波活動の記録解析を継続する。てんかん性の低周波活動の発現機構について、発生基盤が異なると想定されるHFOとの比較検討を、特に発作間欠期に重点をおいて継続し、発作間欠期から発作へと移行する病的な遷移の過程を明らかにする。領域内の異周波数間結合の解析を継続し、てんかん焦点および焦点外における、低周波活動と高周波活動のクロストークが覚醒・睡眠段階で変容する態様を明らかにする。 2) 脳内ネットワークの記録解析:大脳皮質領域間で皮質脳波のコヒーレンス解析および異周波数間結合解析を行い、低周波活動に焦点を当てた病的および生理的な機能的ネットワークの解析を開始する。昨年度に予備解析を行った安静時fMRIの記録解析を継続する。安静時fMRIは、BOLD反応の緩徐なゆらぎに着目して脳の領域間における機能的結合を可視化する手法であり、てんかん焦点部位をseed-ROIとした解析(seed-based法)あるいは独立成分分析法を用いて、てんかん性および生理的ネットワークを明らかにし、皮質脳波による領域間結合の解析結果との比較検討を始める。 3) 病理所見との対比:切除部位の病理標本と、てんかん性の低周波活動およびHFOの分布との比較検討を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は、てんかん焦点における皮質脳波の低周波活動の記録解析に重点をおき、研究が大きく進捗した。皮質脳波およびfMRIによる脳内ネットワークレベルの解析準備も完了したが、データ量が大きくなることが予想され、記録解析の継続に必要となる経費を次年度予算に計上することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
予備解析の結果から、皮質脳波および機能画像による脳内ネットワークの解析はデータ量が大きくなることが予想され、研究継続に必要な諸経費(PC、ソフトウェア、大容量の記憶媒体等)に使用する予定である。
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