研究課題/領域番号 |
15K09358
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
平田 幸一 獨協医科大学, 医学部, 教授 (60189834)
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研究分担者 |
田中 秀明 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (50296159)
高嶋 良太郎 獨協医科大学, 医学部, 助教 (50591939) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脳電場解析 / 慢性片頭痛 / 前兆のある片頭痛 / 前兆のない片頭痛 / 皮質拡延性抑制 / 下降抑制系障害 |
研究実績の概要 |
平田は,研究目的,予想される結果を説明しこれに同意の得られた,持続中枢感作をもつ難治性慢性片頭痛患者を最終的に50名(片頭痛成分の内訳は前兆のある片頭痛21名,前兆のない片頭痛29名)集積し今年度を最終目標として研究を継続した.脳電場の測定には,獨協医科大学臨床研究棟,神経生理室のシールド室および獨協医科大学臨床検査部脳波測定室において行った.頭痛発作間欠期に周波帯域別の光刺激下における頭皮上電極からの閉眼時脳波を記録.その後各光刺激別に選択し,高速フーリエ変換によって脳波を分析して,光刺激に反応したスペクトル頻度ピークと脳電場を観察した. 脳電場解析にはチューリッヒ大学KEY研究所開発のLow Resolution Brain Electromagnetic Tomography(LORETTA)の最新版e LORETTAを用い脳電場を推定した. 以前の検討でわれわれは,片頭痛患者で光過敏性と光駆動反応の相関性を確認している. 今年度,平田と田中は以上の脳電場topographyの結果をまとめ,周波数5,8,15と20Hzの光刺激は,難治性慢性片頭痛患者のなかでもその基本にある前兆のある片頭痛と前兆のない片頭痛患者の間に有意差が示された. すなわちそれは,前兆のない片頭痛を有する患者は,常に,前兆のある片頭痛を持つ患者より強い光刺激に対する応答を呈するということであった. これを詳細に脳電場推定すると周波数5,8,15と20Hzの光刺激は,有意差をもって前兆のない片頭痛患者が前兆のあるものに対し電場強度が高く,20Hzの刺激を除いて,反応の差は視覚皮質に位置し,とくに低周波10Hzの差はブロードマンArea 7に位置した. 本年度の結論として,前兆のある片頭痛での皮質拡延性抑制の反復発生が皮質機能を抑制する可能性があることを示した.すなわち皮質抑制が片頭痛の難治化,中枢過敏を起こすのではなく皮質の興奮により片頭痛の難治化が起こることを明らかにした.現在一流欧米誌に投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
患者の収集,検査測定がほぼ目的通りに終わりデータ解析が終了している. 研究の結論も得ており,前兆のある片頭痛の皮質拡延性抑制の反復発生が皮質機能を抑制する可能性があることを示した。すなわち従来考えられていた皮質の過剰興奮により片頭痛の難治化がおこるのではなく,皮質抑制の欠如が片頭痛の難治化,中枢過敏を起こすことを初めて示した.これは下降抑制系の障害により慢性疼痛が生じるという理論とも一致している.Roberto D Pasqual Marqui博士に校閲をいただきながら現在一流欧米誌に投稿中である. 以上の進捗状況は計画をほぼ充足しているため,おおむね順調に進展しているとした.
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今後の研究の推進方策 |
研究はほぼ終了に近いがRoberto D Pasqual Marqui博士に校閲をいただきながら現在本報告を一流欧米誌に投稿中である.査読者からの意見で追加研究などが必要な可能性がある.また難治性慢性片頭痛の本態が中枢神経系の感作状態とりわけ持続中枢感作であることの解明の糸口が発見できそうであり,追加研究が必要ともかんがえられる.
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次年度使用額が生じた理由 |
上記の今後の計画推進し研究を完全に遂行終了するため次年度使用額が生じた. フラッシュメモリ,記録用紙,プリンタインクなどの消耗品を購入する. 次年度もRoberto D Pasqual Marqui博士に協力していただく予定である.
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