研究課題/領域番号 |
15K09359
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
下 泰司 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (70286714)
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研究分担者 |
梅村 淳 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 先任准教授 (00244567)
大山 彦光 順天堂大学, 医学部, 准教授 (00407256)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | パーキンソン病 / 大脳基底核 / 共振現象 |
研究実績の概要 |
昨年度から引き続き、安定したlocal field potential および細胞外電位記録を行うためシステムを構築を行った。ヒト神経活動記録解析システム(CED社)を購入し、その後、本研究に参加することに同意を得た患者5例において視床下核からFHC社製の微小電極から細胞外電位記録を行った。この記録方法では、local field potential記録に用いる刺激電極より抵抗値の高い電極を用いているために、より精密な電極周囲の電気的変化を記録することができる。その結果、これまでの報告に一致して、視床下核神経細胞において平均16.5Hzの、いわゆるβ帯域の共振現象を認めた。この共振現象は、視床下核の中でも背側及び腹側において強く認められ、また黒質網様層でも認められた。また固縮を誘発及び明確化させるために、記録側と同側の手指の運動させながら記録を行うと、その共振の強度が高まった。これらの結果からは、これまでに報告されている視床下核内での共振現象は、視床下核内にとどまらず、大脳基底核内の広い範囲で出現していることを示唆しており、さらに固縮はこの共振現象の発現に重要な役割をなしておりことを示唆する結果となると思われる。今後はパーキンソン病の中でも、振戦の目立つ症例、ジストニアの目立つ症例における記録を行うことにより、疾患の表現型の違いによる、大脳基底核内の異常神経活動の広がり及び共振現象の周波数解析を行い、それぞれの病態生理の解明を行う予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、パーキンソン病のみならず、ジストニアや本態性振戦の患者に対しても上記のような手法を用いて脳内神経細胞活動を記録する予定であったが、まだ実現できていない。当院における脳深部刺激術の年間手術症例数は日本有数であることを考慮すると、手術適応となる症例数自体が低いことが考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
上記のように、ジストニア症例、本態性振戦症例の研究がまだ行えていないため、今後はパーキンソン病症例のなかで、細かく症状ごとに分類して群間比較を行うことを検討している。ひきつづきパーキンソン病症例に関しては研究参加者を募ることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画より少ない症例数にとどまっているために、様々な雑費の支出が少なかったため。症例数の少ない理由の一つとして、刺激システム販売メーカーが複数に渡り、今回構築した記録/解析システムはそのうちの1社にのみ対応できるものであるため、他社システムを使用する際には記録が不可能となってしまうのも一因と考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
電気生理学的記録に必要なデバイスはそろったため、症例数の増加に伴う消耗品の支出(記録媒体等)や研究結果発表のための学会経費や論文校正費用等に使用する予定である。
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