研究課題/領域番号 |
15K09364
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
葛原 茂樹 鈴鹿医療科学大学, 看護学部, 教授 (70111383)
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研究分担者 |
小久保 康昌 三重大学, 地域イノベーション学研究科, 招へい教授 (60263000)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 紀伊半島 / 筋萎縮性側索硬化症 / パーキンソン・認知症複合 / タウオパチー / TDP-43 proteinopathy / α-シヌクレインパチー / 神経風土病 |
研究実績の概要 |
研究代表者と分担研究者、および研究協力者が保有している「紀伊半島神経難病多発地の筋萎縮性側索硬化症(ALS)とパーキンソン認知症(PDC)患者の臨床情報と剖検脳・脊髄の情報のデータベース化は以下の形でほぼ完了しつつある。 臨床情報:臨床病歴、家族歴、検査データ、画像所見は、PDF化可能なものはPDF化して、外部とは連結されていないパソコンに保存している。剖検脳脊髄試料については、愛知医科大学加齢医学研究所の研究協力者(神経病理学者)に標本作成と病理所見判読を依頼して、2015年以前の剖検症例約20症例の神経病理学的所見は、病理診断所見と顕微鏡像のパワーポイントという形で保存している。臨床情報と病理情報に関しては、氏名や家族歴は匿名化しているが、内部の記述などの完全匿名化は不可能であるので、パソコンへのアクセス用パスワードと、外部に接続のないパソコンに保存するという形で対応している。昨年度に2例の剖検例の追加が発生したので、これらについても本研究に含めることができるようするべく準備している。 これらのデータの活用は、研究担当者間では既に論文化や学会発表で使用し、数編の論文も発表した。しかし、外部への公開は特に個人情報管理という点で難しいものが多いので、研究期間修了までに外部からの利用希望者への対応法を検討して決定する予定である。 資料の解析と本疾患の歴史的背景を検索する中で、紀伊半島ALS/PDCに関する明治以降の古い文献を入手した。これらは公開可能なので、研究者間のクラウドを通じて、利用可能とした。本研究の成果として発表した研究論文も、何らかの形で活用可能な方策を講じたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.手持ちの臨床資料については、ほぼ入力を終えた。 2.脳脊髄の剖検資料の病理学的検索については、概観的な検討は修了した。追加で、詳細な脳蓄積異常タンパクの免疫組織化学とWernickeスターンブロットによるタンパク解析を研究協力者に依頼して実施中である。新しく得られた2例の剖検例についても、病理学的な研究が開始されたので、間に合えば最終報告に加えたい。 3.収集しデータベース化した資料から、一部は論文化ができた。その時に収集した古典的文献は、研究者間の利用ができるようにクラウドで情報共有している。 4.今後残っているのは、資料と脳脊髄の病理所見を症例ごとに対応し検討して、この地域特異性があり、なおかつ地上から消滅しつつある紀伊半島神経風土病(ALS/PDC)の疾患概念、本態、疫学的実態を解析し、論文化することである。これは、後継研究として採択された科研費で本年度から開始予定である。 5.貴重な資料の公開法と部外者の利用希望への対応による活用法については、多施設の状況を参考に課題終了までに決定する。
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今後の研究の推進方策 |
1.まだデータベース化できていない臨床資料の入力、およびPDF化による保存を終了する。この研究グループが所持しているもの以外の資料についても、関係先を当たって入手を試みる。 2、脳脊髄の詳細な病理学的検討を完成させ、臨床データと対比させて臨床病理学的診断基準と疾患概念を確定し、患者の診断と治療、および今後の研究に役立てる。特に本疾患の難病指定のために診断基準策定など、現実の政策に研究成果を活用する方策を検討する。 3.データ利用希望者への公開と利用法を確立する。収集した古い文献については、希望者には閲覧できるようにする。(著作権に抵触しない方法で) 4.症例報告や症例紹介の形で、論文化可能なデータを論文化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究補助員の雇用が初年度に遅れて年度の中途採用となったために、謝金の繰り越しが生じたのが、繰り越しの主な理由である。研究補助者には、本疾患患者データと関係資料のデータベース化の作業の中で、データ入力、所有資料のPDF化、および画像フィルムなどの一部は写真撮影による電子データ化を担当してもらっている。この作業の一部が持ち越しとなっている。この作業は現在継続している。 また、病理材料の染色追加のための試薬費、研究成果の投稿料にも使用予定である。平成30年度の前半には残額がゼロとなる見込みである。
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