(目的)本研究の目的はインプラント埋入手術の際に使用されるサージカルテンプレートを応用してボツリヌス毒素を外側翼突筋に正確かつ簡単に注入する方法を開発することである。 (方法)対象は不随意の開口を生じ、咀嚼障害や構音障害を主訴とする開口ジストニア17例(男性9例、女性8例、平均年齢47.6歳)とした。上顎の石膏模型をスキャンしたデータとCTデータをコンピュータ上で重ね合わせた。サージカルテンプレートを分析するソフトNobelClinician(ノーベル・バイオケア・ジャパン社)を用いて、注射針の先端が外側翼突筋下頭内の最も理想的な位置となるよう、両側2本ずつアンカーピンとして設計し、光造形法で刺入用ガイドを作製した。ガイドを患者の口腔内に確実に装着し、注射針をアンカーピンのスリーブに挿入し、筋電計で針先が筋内にあることを確認し、生理食塩水で希釈したボツリヌス毒素(ボトックス: グラクソ・スミスクライン社)を25-50単位注入した。顎口腔領域のジストニアの客観的評価法3を用いてボトックス注射の治療効果と合併症をガイドの有無で比較した。 (結果と考察)ボツリヌス療法をガイドなしで31回、ガイドを装着して30回行った。注射針の刺入はきわめて容易で、偶発症はまったくみられなかった。ガイド使用によって(63.0%)、ガイドなし(54.1%)より有意に(P<0.002)客観的評価法による改善度が上昇した。本法は外側翼突筋へのボツリヌス治療の際に正確かつ安全な注射を行うために有用であると考えられた。
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