研究課題/領域番号 |
15K09372
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
滝山 由美 旭川医科大学, 医学部, 特任准教授 (00396350)
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研究分担者 |
世良 俊博 九州大学, 工学研究院, 准教授 (40373526)
中村 匡徳 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (20448046)
高橋 賢治 旭川医科大学, 大学病院, 医員 (00736332)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
1.BACTGMT3マウスの脳組織学変化:第3の糖尿病と言われるヒトAlzheimer病の患者脳では、Metallothionein 3(MT3)発現の減少が報告されている。そこで、全身性低酸素応答性MT3発現マウス(BACTGMT3)の脳組織学的変化について検討したところ、Streptozotocin誘発糖尿病、また加齢状態では、同胞野生型マウスに比較しastrocyteが保持され、血液脳関門が維持されていることが示唆された。また、microglia markerであるIonized calcium binding adapter molecule 1 (Iba-1)の染色性がBACTGMTに優位であり、myelin basic protein(MBP)の分布に差異を認めたことから、同病態において、MT3はグリア細胞保護的に作用し、一方、MT3の欠落が、ヒトAlzheimer病脳病変の進行に関与している可能性が示唆された。
2.SPring-8でのin vivo CT:ベンチレータ―による呼吸同期・陽圧換気によりモーションアーチファクトを消失し、in vivo imaging 解析法を確立した。本解析により、加齢BACTGMT3は、同胞野生型マウスに比較し、腎濾過機能を保持していることが明らかとなり、MT3が腎保護的に作用していることが示唆された。
3.ヒト近位尿細管培養細胞におけるMT3発現制御機構の解明:ヒト近位尿細管培養細胞(Human Renal Proximal Tubular Epithelial Cells; HRPTECs)において、1%低酸素暴露に加え、亜鉛、Angiotensin II、Insulinは有意にMT3発現を増強させる一方、TGF-β1は30%程度までその発現を抑制し、糖尿病腎症病態関連因子によるMT3発現の複雑な制御機構が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の研究計画の近位尿細管細胞におけるHIF-1-MT3上流下流シグナル系の検討につき、現在進行中である。SPring-8での撮像画像解析方法の確立により、腎濾過機能の定量的評価が可能となり、現在解析サンプル数を増やし、統計学的検討の予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1.Homozygous transgenic miceの作成:近位尿細管特異的MT3過剰発現マウス(MT3TG)と全身性低酸素応答性MT3発現マウス(BACTGMT3)における加齢表現型の相違:マウス観察過程において、加齢MT3TGマウスでの老齢化の亢進、また、逆にBACTGマウスにおける抗老齢化現象を認めた。糖尿病誘発、高脂肪食負荷などの強い低酸素誘導ストレス条件と緩徐進行性低酸素状態である生理的加齢現象では、適応性酸化ストレスの量と質の相違が考えられた。Homozygous miceを作成し、transgene copy数と、酸化ストレス反応を含めた生理的・生化学的反応、組織変化について、検討を予定している。ストレスに対する適度な反応性と、強度なストレスに対する過剰な適応反応による抗酸化機構破綻の病態におけるMT3の役割を明らかとする。
2.MT3シグナル系の検討:MT3発現制御機構については、平成28年度の実験結果により、その多様性・複雑性が明らかとなりつつある。本年度は更に腎線維化誘発下流シグナル系へのMT3の関与について、検討を進める。
3.早期腎症バイオマーカーMT3についての検討:尿細管細胞におけるMT3過剰発現が糖尿病性腎症病変の起点とすると、尿中MT3の糖尿病性腎症の早期腎症バイオマーカーとして、臨床現場における応用の可能性が考えられる。そこで、旭川医科大学病院糖尿病内科外来通院糖尿病患者の尿検体中のMT3を、既に市販されているELIZAキット(MyBioSource, San Diego, CA)を用い測定し、現行の腎機能指標との相関について検討し、腎症診断、更には予後予測指標としての可能性について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部実験について、他の研究助成金を使用したため。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度より作成中のhomozygous transgenic miceの、transgene copy数と酸化ストレス反応について、生理的・生化学的検査、組織標本作成など、遺伝型と表現型の検討実験費用に使用する。
旭川医科大学病院糖尿病内科外来通院糖尿病患者の尿検体中のMT3測定に使用する、市販ELIZAキット(MyBioSource, San Diego, CA)購入に使用する。
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