研究課題/領域番号 |
15K09373
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
藤田 征弘 旭川医科大学, 医学部, 助教 (20451461)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | グルカゴン / 膵島 / 測定法 |
研究実績の概要 |
α細胞とそこから分泌されるグルカゴンが、糖尿病発症・進展のkey player として再注目されている。本研究では、受容体結合に基づくグルカゴンのバイオアッセイを確立し、糖尿病状態におけるグルカゴン分泌の異常を再検証する。さらに、糖尿病状態のおけるα細胞の機能的異常や増殖能亢進のメカニズムの機序を網羅的に解明する。 バイオアッセイによるグルカゴン測定には、HEK293細胞にグルカゴン受容体とCre-Lucを共発現したpermanent stable cell lineを作成し、この細胞を用いてルシフェラーゼ活性を測定し、アッセイに用いた。健常者および糖尿病患者に経口ブドウ糖負荷試験また食事負荷試験を行い、バイオアッセイの特性を検討するために、既存のイムノアッセイによるグルカゴン測定と比較し、その有効性を検証した。さらに、既に確立しているバイオアッセイによるインクレチン濃度の測定も同時に行った。また、ラット単離膵島を用いて、インクレチによるグルカゴン分泌調節を検討した。 バイオアッセイに用いる細胞は、グルカゴン各濃度でのルシフェラーゼ活性を濃度依存性に上昇させることを確認した。また、合成ペプチドを用いてGIP、GLP-1 が高濃度まで交差反応しないことを確認した。興味深いことに膵臓全摘後の患者の検体でも、グルカゴンが測定できた。さらに、マウス胃、小腸粘膜から抽出液からも、グルカゴン活性を、バイオアッセイ、ELISA両方で検出できた。このことは、膵島以外のグルカゴンが代謝異常に関わっている可能性を示唆する。インクレチンのグルカゴン分泌調節に関してはGIP(1-30)が低ブドウ糖条件のみで、グルカゴン分泌を促進し、高ブドウ糖条件ではグルカゴン分泌を促進しなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、正常耐糖能者または2型糖尿病患者において、ミール負荷試験を行っている。まだ症例数は少ないが、現在月に数例に負荷試験を行っており、それらの検体のグルカゴン血中濃度をバイオアッセイと既存(ELISA)で測定し、得られるグルカゴン測定の結果の比較することは、現在ELISAの測定系の値に問題があり興味深い。ただ、被検者のリクールト(ボランティア)には、難渋しているが、最近その問題も解決されつつある。さらに積極的にリクルートする予定である。 グルカゴン産生細胞の詳細な検討を行うため。グルカゴンプロモーター下にYFPを発現するmGLU venusマウスを飼育している。同マウスについては学内飼育施設内でホモ接合体の形で繁殖させることが可能となり、実験に十分使用できる状態と個体数雨を確保できるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
消化管粘膜から単離したYFP陽性細胞を初代培養し、さまざまなブドウ糖、アミノ酸、インスリン,インクレチンの濃度の条件で、培養液や細胞抽出液を回収して確立したグルカゴン受容体活性化能に基づいた測定法で測定する。我々は受容体結合活性に基づくインクレチン測定法をすでに確立しており、この方法でGIP・GLP-1を測定する。糖尿病状態での変化を、mGluVenus-STZ マウスまたはmGluVenusをAkitaマウスなど自然発症マウスに交配し、糖尿病状態における小腸プログルカゴン陽性細胞の変化について網羅的に検索する。 さらに、mGluVenus-STZマウスよりYFP陽性α細胞を回収し、RNAを抽出し、遺伝子発現の変化をmicroarray法で網羅的に解析する。グルカゴン遺伝子の転写にかかわる転写因子(MafB、Arx、PAX6)やプロセッシングに関わる因子(PC2、PC1/3)を中心に解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部、他の研究資金を使用したため。 結果として、物品費の使用額がが減った。
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次年度使用額の使用計画 |
今後抗体の購入、糖尿病モデルマウス、トランスジェニックマウスの購入に充てる予定である。 さらに遺伝子発現の網羅的解析には費用がかかるため、十分に使用することが可能である。
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