研究実績の概要 |
膵島α細胞と分泌ホルモンであるグルカゴンが、糖代謝のkey modulatorとして再注目されている。α細胞の研究には、生理的培養細胞株がないことや測定法の交差性など課題が多い。本研究の目的として、受容体結合に基づくバイオアッセイ法を確立し、糖尿病状態でのグルカゴン分泌を再検証する。加えて糖尿病状態でのα細胞の数量的・機能的異常や増殖能亢進のメカニズムの機序を探究する。 我々の研究室では、グルカゴン、GIP、GLP-1各受容体とそのシグナル下流のcAMP量に反応し、ルシフェラーゼを発現する(Luc-Cre)を共発現する培養細胞(HEK293)を確立している。昨年の報告でグルカゴン受容体のアッセイではGIPやGLP-1によって受容体活性が活性化されないことを報告したが、追加検討でプログルカゴン遺伝子産物のオキシントモデュリンがかなりグルカゴンと同じぐらいの受容体刺激活性を持つことが明らかになった。 次に正常耐糖能者(n=6)および、2型糖尿病患者(n=4, age: 64.3±12.6 years, BMI: 24.3±3.2 kg/m2)にミール負荷試験(MTT)を行った。なお2型糖尿病患者においては、DPP-4阻害薬服用前後で2回のMTTを施行した。MTTにはクッキーミール( 592 kcal, carbohydrate 75 g, protein 8.0 g, fat 28.5 g)を用いた。グルカゴン測定には、市販されているELISAキットも使用し比較検討した。まず、正常耐糖能患者に比較して、2型糖尿病患者では、バイオアッセイ法では高値であることが確認できた。さらに2型糖尿病患者において、バイオアッセイ測定によるグルカゴンのincremental AUC (iAUC0-120 min) は、DPP-4阻害薬内服で優位に低下することを確認した。
|