平成27-29年度の研究において、2型糖尿病において膵島アミロイドの沈着を引き起こす因子として、大血管障害の合併と老人発症糖尿病を見出した。 その際、心重量とアミロイドの沈着に有意な相関が認められたが、2型糖尿病、血圧、脂質異常症、喫煙の有無などの臨床パラメーターとアミロイドの沈着容積の相関は見られなかった。この結果は心臓における傷害因子が膵島のアミロイドの沈着を促進している可能性を示唆している。 膵島内血管変化を検討したところ、意外にも2型糖尿病だけでは膵島内の微小血管の密度、太さに変化は認められなかった。それに対し、大血管障害により膵島内部の血管の拡張が、大血管障害と糖尿病の合併により膵島内の血管の減少、膵島周囲の血管の増加が認められた。このことは、大血管障害により膵島内血管の拡張、うっ帯が起こり、アミリンのクリアランスの低下が起き、また、アミロイドの沈着により膵島内の血管減少がもたらされる可能性が考えられた。 大血管障害における膵島内の血管の基底膜の変化を抗ラミニン抗体による免疫蛍光染色とPAM染色により評価した。その結果、基底膜の厚さについては明らかな差は見出すことは出来なかったが、PAM染色による血管の厚さでは、大血管障害合併糖尿病で明らかな壁の肥厚が見出された。このことは、大血管障害による循環不全は膵島内の血管壁の肥厚をもたらし、その結果、アミリン蛋白の血管内への拡散抑制を来たしていることと考えられた。 高齢発症2型糖尿病において、著明な膵島アミロイドの沈着を起すことが解明された。興味深いことに、アミロイドの沈着は中年から継続し、老年となった2型糖尿病症例では中年発症糖尿病と比べてもその頻度は高くなかった。つまり、老年発症糖尿病では発症前に一過性のインスリンの過分泌がおこり、その結果、膵島アミロイドの沈着が惹起されていると考えられた。
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