研究課題/領域番号 |
15K09377
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高本 偉碩 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60431871)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 2型糖尿病 / 疾患感受性遺伝子 / インスリン分泌 / 膵β細胞 / KCNQ1 |
研究実績の概要 |
【背景・目的】電位依存性カリウムチャネルKCNQ1は強力かつ普遍的な2型糖尿病の疾患感受性遺伝子として同定され,その重要性は国際的に広く認識されている.臨床的にはインスリン分泌への関与が示されているが,詳細な分子機構は不明である.そこで本研究では,KCNQ1に関する様々な遺伝子改変マウスならびに膵β細胞特異的な蛍光レポーターマウスの作製・解析を通じて,膵β細胞機能の制御,膵β細胞量の制御,膵β細胞の発生・分化・成熟に対してKCNQ1が担う生理的・病態生理的役割をin vivoで解明し,2型糖尿病治療薬としてのKCNQ1作動薬/阻害薬の可能性を検討する. 【結果】KCNQ1に関する遺伝子改変マウスとして,我々はKCNQ1の機能低下型(チャネルclose型)遺伝子変異マウスの同定に成功した.具体的には,C57BL/6J-Kcnq1vtg-3J/Jについて,KCNQ1のエクソン7に1塩基変異が存在していることを突き止め,アフリカツメガエル卵母細胞を用いた電気生理学的検討で本変異がチャネルclose型変異であることを明らかにした.そして,KCNQ1の機能低下型遺伝子変異マウスは明らかな耐糖能異常を示さないことを見出した. また,我々は胎生期から成体に至るまでの膵β細胞の挙動を可視化するツールとして,マウスインスリンプロモーターの下流に蛍光蛋白質GFPのcDNAをつなげたトランスジェニックマウス(MIP-GFPマウス)を保有しているほかに,インスリン遺伝子の転写制御や膵β細胞の分化・成熟に重要な転写因子MafAのプロモーターの下流に蛍光蛋白質mCherryをコードする遺伝子をノックインした膵β細胞特異的な蛍光レポーターマウス(MafA-mCherryマウス)の作製に成功し,単離膵島ならびに膵β細胞で明瞭な蛍光を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
KCNQ1の機能低下型(チャネルclose型)遺伝子変異マウスの同定に成功したことに加えて,野生型のKCNQ1を膵β細胞で増加させた遺伝子改変マウス(RIP-wtKCNQ1-Tg)と,機能亢進型(チャネルopen型)KCNQ1を膵β細胞に発現させた遺伝子改変マウス(RIP-mtKCNQ1-Tg)についても作製済みの段階にある. 特に,RIP-mtKCNQ1-Tgについては,ヒトで家族性心房細動の原因となるKCNQ1の変異体に着目し,電気生理学的検討で軽度の脱分極刺激で容易にチャネルが開くチャネルopen型変異体であることを確認した上で,Rat Insulin Promoter (RIP)の下流にマウスKCNQ1に対応する変異cDNAをつなぐコンストラクトを構築して,トランスジェニックマウスを作製した.
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今後の研究の推進方策 |
KCNQ1に関する様々な遺伝子改変マウス(KCNQ1機能低下型遺伝子変異マウス,膵β細胞での野生型KCNQ1過剰発現マウス,膵β細胞での機能亢進型KCNQ1発現マウス)と蛍光レポーターマウス(MIP-GFPマウス,MafA-mCherryマウス),ならびに両者を交配したダブル遺伝子改変マウスを用いて,普通食環境下・高脂肪食負荷下にて,耐糖能・インスリン分泌能・膵β細胞量を検討する.単離膵島・膵β細胞を採取し,電気生理学的解析とともに,遺伝子発現解析を行い,KCNQ1の下流に位置する鍵分子の同定を目指す. また,KCNQ1とともにKCNQ1チャネルを構成して電気生理学的な性質を修飾するβサブユニット(KCNEファミリー)が,心筋細胞と膵β細胞とでは異なる可能性があり,この点も検証する.
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