研究課題/領域番号 |
15K09381
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
坂野 僚一 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (80597865)
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研究分担者 |
有馬 寛 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50422770)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 視床下部炎症 / ミクログリア / アストロサイト / PTP1B / 高脂肪食 / STAT3リン酸化 |
研究実績の概要 |
PTP1B KOマウスおよびWTマウスに離乳時から普通食もしくは高脂肪食(HFD)を投与し7週齢における視床下部炎症を検証したところ、WTマウスにおいてHFD投与により視床下部における炎症関連サイトカインTNFα、IL-6およびIL-10のmRNA発現は有意に増加した。一方、HFD群において内臓脂肪および血中TNFα濃度は両群間で有意差を認めなかったものの、TNFαのmRNA発現はKOマウスでWTマウスと比較して有意に減弱し、抗炎症性サイトカインであるIL-10のmRNA発現は有意に増強した。HFD投与下でKOマウスにおける視床下部炎症減弱の機序を調べる目的で視床下部器官培養を施行したところ、TNFα受容体シグナル下流のJAK2-STAT3経路がKOマウスで亢進しており、STAT3のリン酸化亢進がTNFαの発現抑制およびIL-10の発現増強に寄与していることが判明した。KOマウスにおけるSTAT3リン酸化亢進が視床下部のどの部位で生じているか調べる目的でTNFαを脳室内投与(icv)後15分もしくはHFD 4週間投与後に屠殺し視床下部におけるSTAT3リン酸化を評価したところ、TNFαicv投与群では、KOマウスにおいてミクログリアにおけるSTAT3リン酸化が有意に亢進しており、HFD投与群ではKOマウスにおいてミクログリアおよびアストロサイトにおけるSTAT3リン酸化の有意な亢進を認めた。これらの結果から、高脂肪食投与に伴う視床下部炎症におけるPTP1Bの役割として、急性期にはミクログリア、慢性期ではアストロサイトにおいて炎症の調節を担っていることが示唆された。これらの知見を国内外の学会で報告するとともに、アストロサイト特異的にPTP1Bを欠損させたマウスの作製に着手した。現在、PTP1B floxマウスおよびGFAP Creマウスの繁殖中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高脂肪食投与に伴う視床下部炎症がPTP1B KOマウスにおいてWTマウスと比較して減弱する機序として、急性期にはミクログリア、慢性期にはアストロサイトにおけるSTAT3のリン酸化亢進が寄与しているところまで解明できたものの、アストロサイト特異的にPTP1Bを欠損させるモデルマウス作成のためのPTP1B floxマウスの入手に時間がかかり、繁殖の開始が遅れているため当初の計画からやや遅れている状態である。また、GFAP Creマウスはタモキシフェンを投与することでCre発現が誘導されるモデルであるが、Cre発現のタイミングを調節する目的で、GFAP Creマウスとレポーターマウスと交配させてタモキシフェンの投与濃度および頻度を変えて現在検討中であるが、GFAP Creマウスとレポーターマウスの繁殖に時間がかかり、当初の計画からやや遅れている状態である。
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今後の研究の推進方策 |
PTP1B fl/fl GFAP Creマウスを作成し、普通食もしくは高脂肪食を投与してフェノタイプを解析する。レプチン抵抗性および糖代謝についてWTおよびKOマウス間において比較検討する。また、高脂肪食投与に伴う視床下部炎症をKOマウスおよびWTマウスで比較検討する。アストロサイト特異的なPTP1Bの欠損が、高脂肪食投与に伴う視床下部炎症下においてアストロサイトの機能および形態にどのような変化をもたらすか、またその結果としてミクログリアの機能や形態にどのような影響を与えるかを検討する。PTP1B fl/fl GFAP Creマウスの視床下部器官培養を用いて、TNFα刺激に対する炎症関連サイトカインの分泌動態について分子生物学的観点から検討する。
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