研究課題/領域番号 |
15K09381
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
坂野 僚一 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (80597865)
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研究分担者 |
有馬 寛 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (50422770)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 視床下部 / ミクログリア / アストロサイト / PTP1B / 高脂肪食 |
研究実績の概要 |
PTP1B欠損(KO)および野生型(WT)マウスを用いて視床下部器官培養を行い、炎症刺激にTNFαを用いて炎症関連サイトカインのmRNA発現を評価した。培養液中へのTNFα添加はTNFαmRNAおよびIL-10のmRNA発現を増強したが、KOではWTと比較してTNFαのmRNA発現は有意に減弱し、IL-10のmRNA発現は有意に増強した。また、WT、KOともにTNFα刺激によりJAK2、STAT3、NFκB p65、JNKおよびp38のリン酸化の亢進を認めたが、KOではJAK2およびSTAT3のリン酸化がWTと比較して有意に増強した。2種類のSTAT3阻害剤を用いてJAK2-STAT3経路のリン酸化を阻害したところ、TNFα刺激によるTNFα mRNAおよびIL-10のmRNA発現におけるWTとKO間の差は消失したことから、KOで認められたTNFα刺激によるTNFα mRNA発現の減弱およびIL-10 mRNA発現の増強はJAK2-STAT3経路を介した機序であることが示唆された。更にミクログリア除去剤(LipCLO)投与下で同様にmRNA発現を評価したところLipCLO投与によりミクログリアのマーカーであるIba1、CD68およびEmr1のmRNA発現は有意に減少し、TNFα刺激によるTNFαおよびIL-10のmRNA発現はKOとWTで有意な差を認めなかった。一方、WTを用いた視床下部器官培養においてレプチンは視床下部のSTAT3のリン酸化亢進をきたしたが、TNFα刺激によるTNFαのmRNA発現には有意な影響を与えなかったことから、レプチンシグナル下流のJAK2-STAT3経路は抗炎症作用を有さないことが示唆された。以上から、ミクログリアにおけるPTP1BはJAK2-STAT3経路を介して高脂肪食摂取に伴う視床下部炎症を増強する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ミクログリアの解析は終了したが、アストロサイトにおけるPTP1Bの役割りを検討する上でタモキシフェン誘導性のGFAP Creマウスを使用するも、Cre蛋白の誘導が確認できない状況であるため、通常のGFAP CreマウスとPTP1B floxマウスの交配にきりかえてコホートを組んでいる。レプチンの腹腔内投与によりアストロサイトにおいてSTAT3のリン酸化はPTP1B KOでWTと比較して有意に増強していることは確認できている。年内にコホートの解析も終了予定であるが全体として進捗状況はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
アストロサイト特異的にPTP1Bを欠損させたマウスを作成し、エネルギー代謝および糖代謝の解析を行うとともに、magnetic activated cell sorting (MACS) 法を用いて視床下部からミクログリアおよびアストロサイトを単離し、炎症関連サイトカインのmRNA発現(TNFα、IL-6、IL-1βおよびIL-10)およびグリアの極性(M1、M2、A1およびA2)について評価する。また、LC-MS/MSを用いてミクログリアおよびアストロサイト内の各種脂肪酸の含有量についても高脂肪食投与群と普通食投与群で比較検討する。
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