研究実績の概要 |
本研究は、細胞内エネルギー産生に不可欠なNAD(nicotinamide adenine dinucleotide)代謝経路に着目し、NAD代謝産物が糖尿病血管合併症、特に糖尿病性腎症の新規バイオマーカーとなる可能性を探るため、滋賀医科大学の糖尿病血管合併症長期前向き観察研究で保存されている尿・DNA検体と、経年的に蓄積している追跡データを用いて検証すると共に、NAD代謝に関与する遺伝子の遺伝子多型が尿中NAD代謝産物排泄量に与える影響と疾患感受性との関連を検討し、糖尿病血管合併症の克服を目指した個別化医療の実現に向けた臨床展開を目指すことを目的としている。これまでに、経年的な長期前向き研究参加者の糖尿病関連臨床検査・合併症程度・生命予後を継年的に収集し、データベース化を継続して実施するとともに、NAD代謝経路に関与する遺伝子の中で、NNMT(Nicotinamide n-methyltransferase)遺伝子領域の1塩基多型(SNP)が、断面研究ではあるが、顕性タンパク尿合併症例(ケース群)で、コントロール群である正常アルブミン尿期症例との比較にて、有意に関連を示すSNPがあることを見出し、NNMT遺伝子が腎症感受性遺伝子である可能性が示唆された。現在、尿中のNAD, NADH, 1-methyl nicotinamide(1-MNA), nicotinamide, NMN(nicotinamide mononucleotide)濃度測定の感度を向上させるため、LC-MS/MSに用いる測定機器をTQ5500に変更し、測定検出感度を上げて尿中代謝産物の測定を継続している。
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