Thrombospondin1 (THBS1)は血管新生抑制因子として癌治療への応用が考えられてきた。 一方、米国で高度肥満患者の脂肪組織においてThbs1の遺伝子発現が増強しているという報告があり、我々はTHBS1と肥満との関連に注目した。 我々はすでにThbs1ノックアウトマウスでは高脂肪食負荷による肥満抵抗性を示し、コントロールと比較してインスリンへの反応性を 維持することを報告した(Inoue et al. Endocrinology)。また、米国と同様に日本においてもThbs1遺伝子は肥満患者の脂肪組織で発現が増加していることを明らかにして報告した(Mastuo et al. Metabolism)。我々はTHBS1をはじめとする細胞外マトリックスの肥満症の発症メカニズムにおける意義を明らかにするためにいくつかの検討を行ってきた。 本年度はヒトの代謝におけるTHBS1をはじめとした細胞外マトリックスの意義についてさらなる解析をおこなうべく、その基礎となる基盤を形成することとした。約4000例の検診検体を用いて検診結果のデータベースを作成し、THBS1をはじめとする細胞外マトリックスの血中濃度と肥満度、体脂肪率、内臓脂肪量、皮下脂肪量、筋肉量、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症、高血圧などのいわゆるメタボリックシンドロームと言われる疾患の様々な指標との関連を検討。また、画像診断で得られた内臓脂肪面積、皮下脂肪面積、脂肪肝の有無、褐色脂肪組織の有無など、これまで実験動物を用いて検討してきた形質がヒトでも見られるか検討可能な基盤を形成し、次の研究への礎とした。
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