研究課題/領域番号 |
15K09393
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
久木留 大介 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (10555759)
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研究分担者 |
荒木 栄一 熊本大学, その他の研究科, 教授 (10253733)
松村 剛 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (20398192)
西川 武志 独立行政法人国立病院機構熊本医療センター(臨床研究部), その他部局等, その他 (70336212) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ミトコンドリアROS / 低血糖 / β酸化 |
研究実績の概要 |
【目的】本研究では、急激な血糖是正や低血糖によりmtROSが増加する可能性を検討する。さらに、低血糖時のmtROS産生と細胞内エネルギー代謝、低血糖由来mtROSと網膜症との関連について明らかにし、新規の合併症治療法を探索する。 【結果】①低グルコース(low)群では正常グルコース(normal)群に比しmtROS産生増加 (1.16 vs 1.00, p<0.01)を認め、MnSOD過剰発現ECのlow群ではmtROS産生増加抑制を認めた。②網羅的メタボローム解析にて、low群ではnormal群に比し解糖系の低下によるピルビン酸や乳酸濃度低下 (242 vs 287 pmol/106 cells, p=0.06 ; 1264 vs 2344 pmol/106 cells, p=0.004)を認めた。一方、両群間でTCA回路を構成する代謝産物、ATPおよびGTPに有意差はなく、low群で解糖系の低下によるエネルギー供給欠乏には至っていないと考えた。しかし、解糖系とβ酸化からの代謝物であるアセチルCoA濃度は、両群同等であり(0.2 vs 0.3 pmol/106 cells, p=0.23)、low群では解糖系の低下を補うためのβ酸化亢進が推測された。また、グルタミン代謝中間産物には両群間に変化を認めなかった。パルミチン酸添加によるミトコンドリア酸素消費速度( OCR )は、low群でnormal群に比しパルミチン酸不含培養時より有意な増加(232 vs 174 pmol/min, p<0.05 )を認めた。しかし、etomoxir(CPT1阻害剤)処理にてパルミチン酸添加によるlow群のOCR増加は、normal群と同程度 (167 pmol/min)に抑制を認め、low群におけるβ酸化亢進が示唆された。③low群でACCのリン酸化増強を確認した。low群で産生増加を認めたmtROSは、β酸化阻害剤により抑制を認めたが、Warburg効果に寄与しているグルタミン酸代謝経路阻害剤では、抑制は認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
内皮細胞は、低グルコース刺激によりミトコンドリア由来活性酸素(mtROS)を産生増加することを確認できた。その基質としてWarburg効果に寄与しているグルタミン酸代謝を予想していたが、グルタミン阻害剤では、mtROS産生抑制は認められなかった。網羅的メタボローム解析により脂肪酸β酸化亢進が生じている可能性を早期に見いだせたことで、概ね順調な研究の進行が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
In vivo研究を主に予定しており、10週齢のC57BL/6マウス( WT )および血管内皮特異的MnSOD過剰発現マウス( eMnSOD-Tg )を用い、さらに各マウスにストレプトゾトシン導入糖尿病の4週間後よりインスリン腹腔内投与による低血糖負荷 ( BG: 45 mg/dL、持続時間60分、6回/2週 )を実施し、低血糖による網膜症への影響を解析する。網膜組織における④酸化ストレス ( ROS )を8-hydroxy-2'-deoxyguanosine ( 8-OHdG )抗体、⑤網膜症増悪の初期変化をsemaphorin-3A ( SEMA3A )抗体とvascular endothelial growth factor ( VEGF )抗体、を用いた蛍光免疫染色法により評価する。さらには、Laser Microdissection法にて網膜組織におけるSEMA3AやVEGF mRNAの定量も解析を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
効率的に実験を施行できた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度も計画的効率的に研究を進めていく。
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