研究課題
肥満は世界中で問題となっており、肥満は成人のみならず、子供の肥満も問題となっている。本研究は、ラットを用いて成体と幼若ラットの摂食・エネルギー代謝を比較することで、摂食・代謝調節の発達機構を解明することを目的としている。本研究では、性成熟後の8週齢の雄ラットと離乳直後の3週齢の雄ラットを使用し、高脂肪食の摂食パターンを調べたところ、成体ラットにおいてはその摂取カロリーが普通食を与えたラットの1.5倍になるのに対し、3週齢ラットでは普通食を与えたラットと全く同じ摂取カロリーであった。報酬系が発達していない可能性を確かめる実験を行ったところ、幼若期でも高脂肪食は報酬であると感じている結果が得られた。さらに、脳内の報酬系の違いをを調べるために、報酬系を司る重要な脳部位である腹側被蓋野(VTA)に逆行性トレーサーを局所投与し、VTAに投射するニューロンを調べたところ、視床下部外側野や、室傍核、扁桃体、弓状核、背内側核を含む多くの脳部位がVTAに投射していることが明らかになったが、3週齢と8週齢ではその投射に違いがなかった。研究計画では室傍核のオキシトシンニューロンに違いがあることを推測していたが、VTAに投射するオキシトシンニューロンはほとんど見られなかった。さらにVTAの投射先であり、報酬系の確立に重要な部位である側坐核(NAc)に逆行性トレーサーを注入したところ、VTA→NAcへの投射に8週齢と3週齢では違いがなかった。現在までのこれらの結果から、成体と幼若期の摂食の違いは、室傍核や、報酬系投射ニューロンが原因ではないことが明らかになった。
3: やや遅れている
当初の研究計画では幼若期のオキシトシンニューロンがエネルギー摂取制御に非常に重要であろうと推測していたが、研究が進むにれてその仮説は間違っていたと考えられ、研究の方向性を少し変えたため。
今までの研究において、この幼若期と成体の摂食制御は視床下部レベルの違いではないことが推測される。そこで、報酬系に焦点をあて、幼若期と成体の報酬系制御の違いを、組織、解剖学的、さらには電気生理学的手法により明らかにする予定である。
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