研究実績の概要 |
膵β細胞のtransient receptor potential (TRP) channelは背景電流として膜電位形成に関与している重要なチャネルである。我々は TRPチャネルの中でもTRPM2あるいはTRPC3に注目して数編の論文を発表してきた。インクレチンホルモンであるGLP-1は、その作用機序としてβ細胞刺激性ホルモンであり、糖尿病の治療に用いられている薬物であるが、その作用機序にTRPM2が関与していることを証明し、論文発表した。GLP-1が作用するとβ細胞は脱分極するが、この機序はcAMP産生とその結果においてTRPM2チャネルの開口が関与していることを証明した。平成28年度にはこれらの知見をまとめて創設を発表した。(Kakei M, Yoshida M, Dezaki K, et al.review. Endocr J,2016; 63(10): 867-876.)この論文ではATP感受性K(KATP)チャネルとTRPM2チャネルの相対的活動度の違いによるβ細胞の膜電位調節とインスリン分泌調節を解説した論文で以下のようにまとめられる。 (1)TRPM2はGLP-1受容体の下流のシグナルの蛋白である。(2)TRPM2の開口は膜の脱分極を示す(3)TRPM2は温度依存性である (4)TRPM2はグルコース依存性であり、グルコース代謝により活性化される。平成29年度には生理的濃度のアドレナリンがGLP-1受容体刺激と拮抗する形でインスリン分泌を抑制することをDiabetes誌に発表した。また、健常人におけるTRPM2の意義を雑誌心電図38(2)142-147、2018に発表した。この総説では、KATPチャネルの肥満における病態的意義を解説した。
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