研究課題/領域番号 |
15K09399
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
税所 芳史 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (90327510)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 2型糖尿病 / β細胞量 / 肥満 / 日本人 / 膵内分泌細胞 |
研究実績の概要 |
昨年度、当院での膵摘出術を施行された患者99例の膵組織を用いて、膵α・β細胞量の肥満や糖尿病での変化を検討した結果を英文誌に出版した(Inaishi et al. J Clin Endocrinol Metab 2016)。その結果、β細胞量は糖尿病患者において、年齢、BMIをマッチさせた非糖尿病のコントロールと比べて46%減少していることが明らかとなった(1.48 ± 1.08% vs. 0.80 ± 0.54%, P <0.001)。一方、α細胞量は両群で有意な差を認めなかった。糖尿病の有無に関わらず、肥満度、過去の肥満歴あるいは過去最高体重といった肥満の指標はいずれもβ細胞量やα細胞量に明らかな関連を認めなかった。β細胞量は手術前後のHbA1cやその他の血糖コントロールの指標と有意な負の相関を認めたが、α細胞量との間にはそのような関連は認めなかった。以上のことより、インスリン抵抗性下におけるβ細胞量の変化は日本人では極めて限定的であること、また、α細胞量ではなく、β細胞量が血糖コントロールを規定する主要な因子であることが明らかとなった。 本年度は、これらの患者および剖検例72例を加えた計171例の膵標本を用いて、β細胞量に関わる因子についてさらなる検討を進めた。膵内脂肪量とβ細胞量との関連につき検討を行い、結果を日本糖尿病学会(2016年5月京都)、欧州糖尿病学会(2016年9月ドイツ)にて報告し、現在論文投稿中である。また、現在他の内分泌細胞の肥満や糖尿病における変化についても検討を行い、日本糖尿病学会および米国糖尿病学会にて発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
剖検症例および膵手術症例のエントリーおよび組織免疫染色、解析については現時点で特に大きな問題なく順調に進んでいる。引き続き、これらの症例において様々な組織学的解析を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在当研究室での膵組織検討の経験を活かし、九州大学との共同研究にて久山町スタディーの剖検例を用いた膵β細胞量の検討も進行中である。様々な角度から日本人でのエビデンスを構築していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額と合わせて主に物品費として使用する予定。
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