研究課題/領域番号 |
15K09401
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
袴田 秀樹 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (70284750)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | エネルギー・糖質代謝異常 / 膜輸送と輸送タンパク質 / リピドミクス |
研究実績の概要 |
本研究は、オミクスの内、脂質の網羅的解析法であるリピドミクスに注目し、イオントラップ型 (IT) と飛行時間型 (TOF) のハイブリッド型の質量分析計を搭載したLC-IT-TOF-MSによる新規リピドミクス法を開発し、それを小腸モデルを用いるin vitroのエネルギー吸収実験へと適用し、経腸栄養剤を具体例とする脂質の吸収動態解析法の開発へと繋げ、最終的には多成分共存下での極めて複雑なエネルギー吸収の複合動態を代謝医学的に記述することを目的としている。 初年度は、リピドミクス法の開発のための種々の条件検討を行った。リピドミクス法を開発するに際し、血清の分析を行うのが一つの基本スタイルである。しかし、血清はマトリックスが複雑であるので分析対象として取り扱うのは簡単ではない。これまでのLC-IT-TOF-MSによるリピドミクス法開発の報告では、血清を分析対象とした場合、有機溶媒による脂質抽出を行った後、検出イオンモードとしてはポジティブイオンモードの測定しか行っていない。そこで、ポジティブとネガティブの両イオンモードを活用して、測定対象の脂質分子種の拡張を意図した研究を行った。その結果、IT-TOF-MSの検出にネガティブイオンモードを活用することによって、幾つかの遊離脂肪酸をネガティブイオン[M-H]-として検出することができ、測定対象の脂質分子種を拡張することができた。また、吸収動態解析法の開発の準備として、消化態経腸栄養剤の脂質抽出を行い、血清の脂質分析で設定したLC-MS条件でマスクロマトグラムを測定してみたところ、主要なリゾホスファチジルコリン、ホスファチジルコリン、トリグリセライドを分離検出することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果の概要で述べたように、3年計画の1年目として必要な質量分析の検出条件に関する情報はおおむね予定通りに得られており、今後の推進方策で述べるように、当初の計画をそのまま推進すればよいと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度以降は、平成27年度から開発しているリピドミクス法を、吸収動態解析法として活用できるようにするために、定量的な分析法として発展させる。多成分同時定量を行う場合、数十から数百の測定対象すべての標準品を購入、もしくは合成してそれぞれの検量線を描くことは現実的ではない。測定対象をグループ分けして、グループごとの内標準物質を設定し、内標準物質のシグナル強度に対する測定対象のシグナル強度の比を使って半定量(semi-quantitative determination)するのが実際的である。グループ分けに関しては、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルコリン、トリグリセライドに加え、リゾホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジン酸、ヘキソシルセラミド、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、リゾホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルセリン、ジアシルグリセロール、セラミド、スフィンゴミエリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルエタノールアミン、コレステロールエステル、ホスファチジルイノシトールとし、それぞれの内標準物質を用意してシグナル強度(ピーク面積)の比で定量できないかを検討し、これらの脂質の一斉定量法(定量的リピドミクス法)として確立する。同時に、エネルギー吸収実験を行うための小腸モデルとして用いるCaCo-2細胞の培養実験を開始し、種々の条件検討も行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
99.9%使用済みであり、ほぼゼロと考えている。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の予算の一部(0.1%)として使用する。
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