研究課題
自己免疫疾患の標的臓器ならびに免疫寛容の破綻を一元的に説明する遺伝子・分子・パスウェイを同定し、正常免疫に抵触することなく自己免疫のみを制御する安全で確実な予防法・治療法の構築に資する基盤情報を得ることを目的として研究を進めた。異なる臓器を標的とする自己免疫疾患として1型糖尿病(膵β細胞)、自己免疫性甲状腺疾患(甲状腺)、円形脱毛症(毛包)の相互関係を解析、検討した。バセドウ病患者235名、円形脱毛症患者110名、健常対照者211名を対象として、疾患合併の相互関係を検討するとともに、合併に寄与する遺伝因子として、既に報告しているHLA以外のno-HLA候補遺伝子に関する遺伝子タイピングを行った。その結果、バセドウ病には13.4%と高率に円形脱毛症を合併すること、家族歴に円形脱毛症を有する率も5.4%と高率であることが判明した。候補遺伝子解析の結果、CTLA4とTSHRがバセドウ病と有意の関連を示すこと、しかし円形脱毛症患者における甲状腺自己免疫の合併とは有意の関連を示さないことが明らかとなった。この結果はDRB1*15:01-DQB1*06:02ハプロタイプがバセドウ病単独ならびに円形脱毛症に合併するバセドウ病の両者と有意の関連を示すという我々の以前の報告とは対照的結果であり、臓器特異性を決定する遺伝因子の中に、複数の自己免疫合併と単独の自己免疫で共通するものと異なる者があること、これらの全貌を解明して対応策を構築する必要を示唆する結果と考えられた。
2: おおむね順調に進展している
ヒトにおいて異なる臓器に対する自己免疫疾患の相互関係を明らかにし、その基盤となる遺伝子、分子、パスウェイといった分子メカニズムを解明するプロジェクトは順調に成果を挙げて、英文原著ならびに学会発表で報告もしている。一方、モデル動物における解析は、」遺伝子改変動物の作成・維持ならびに表現型解析を進めているが、現時点で表現型に明らかな変化を認めないことから、今後、より詳細なsub-phenotypeの解析を進める必要がある。
ヒトにおいて異なる臓器に対するの相互関係を明らかにし、その基盤となる遺伝子、分子、パスウェイといった分子メカニズムを解明するプロジェクトに関しては、これまでに集積してきた複数の臓器に対する自己免疫を合併する症例と単独の標的臓器に対する自己免疫の症例を駆使して、それぞれに関与する遺伝因子をさらに詳細に解析する。モデル動物における解析は、既に確立し、繁殖維持している遺伝子改変動物の表現型を、組織・免疫学・分子レベルの面から、より詳細なsub-phenotypeとして解析を進める。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
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