研究課題/領域番号 |
15K09405
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
岡本 士毅 生理学研究所, 生体機能調節研究領域, 助教 (40342919)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | FGF21 / 炭水化物嗜好性 / AMPK |
研究実績の概要 |
食餌選択行動を制御する視床下部PVH-CRHニューロンにおけるAMPKを活性化する、末梢組織からの刺激因子として、ヘパトカインであるFGF21に着目し、FGF21シグナルの視床下部内作用点と脳内ネットワークを解明を進めている。FGF21受容体であるFGFR1cに対するshRNAにより視床下部PVHまたはSCNでの受容体発現を抑制すると、絶食時に高まる炭水化物食嗜好性が完全に遮断された。このFGF21の作用が、PVHに存在し食餌嗜好性制御ニューロンと位置づけたCRHニューロンへの直接作用か否か、検討するためにPVHのCRHニューロンにshRNAを特異的発現させ絶食すると、やはり高炭水化物食嗜好性は完全に消失した。 これはPVH-CRHニューロン自体が、絶食時に肝臓で産生され血中濃度が増加するFGF21を直接感受し、CRHニューロンの活性化に寄与している事を示唆する。CRHニューロンの神経活動がFGF21添加によって実際に活性化するのか、FGF21によってCRHニューロン活性機構の機能維持がなされているのか解明する為にも、食餌嗜好性制御CRHニューロンの細胞同定示標の探索を先ず進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
PVHのCRHニューロンに対するFGF21の効果はFGF受容体に着目して検討中だが、受容体複合体を形成するβklothoシグナルの検討や、SCNにおけるFGF21の効果について細胞体同定等の実験が遅れている。また狂犬病ウィルスを用いて、CRHニューロンの上流入力先の探索を29年度の研究計画に掲げて準備を進めていたが、つい最近、全く同様の方法を用いて上流探索を行った報告(Natue 532, 103-106 (2016))がなされ、視床下部内からのCRHニューロンへの入力は予想通り多いが、匂いストレス刺激においては扁桃体からの入力経路が重要であるという報告であり、私の注目するSCNからPVHへの入力経路は主要経路では無い事も含まれていた。今後はFGF21のニューロン細胞への機能維持効果に対する作用も考慮し、先ずはCRHニューロンにおけるFGF21の生理的機能解析に焦点を絞る予定である。
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今後の研究の推進方策 |
外因性FGF21投与により、甘み感受性を低下させ、肥満状態に於いても砂糖摂取量を低下させる報告が2報発表(Cell Metabolism 23, 1-6及び23,335-343 (2016))され、肥満者の糖分過剰摂取を防ぐ治療応用として期待されている。絶食時に増加するFGF21によって炭水化物嗜好性を亢進させる私の仮説とは逆となるが、この報告で使用されたFGF21の濃度は生理的範囲を100倍以上逸脱しており、本来のFGF21の機能とは考えにくい。FGF21は絶食時に肝臓で合成が高まるが、肥満時に生じる脂肪肝においても合成が高まる事も報告されているので、FGF21の生理的機能解明が重要で有ると考えられ、CRHニューロンに対するFGF21の絶食時における機能解析を継続して進める。また狂犬病ウィルスを用いたCRHニューロンの上流探索を行った報告(Natue 532, 103-106 (2016))がなされ、私の注目するSCNからPVHへの入力経路は特に主要経路では無い事が明らかになった。 そこで、CRHニューロンへの入力経路探索ではなく、嗜好性制御コマンドニューロンとしてのAMPK反応性CRHニューロン自体の特性を解明する事に方策を転換する。AMPK反応性CRHニューロンをex vivoで細胞内カルシウム濃度を測定する事で分別・単離・回収し、cDNAアレイ解析を行い、in vivoで高発現し、判別可能な新規マーカーを同定する。その後新規判別マーカー特異的な発現制御下で蛍光タンパク質を発現させる実験動物の作出を行い、神経活動の測定と摂食行動制御における寄与を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
会計処理の都合上、次年度使用額が生じましたが、年度内に執行しております。
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次年度使用額の使用計画 |
既に執行済みで残額は有りません。
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