研究課題/領域番号 |
15K09406
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研究機関 | 公益財団法人冲中記念成人病研究所 |
研究代表者 |
小林 哲郎 公益財団法人冲中記念成人病研究所, その他部局等, 研究員 (30113442)
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研究分担者 |
永淵 正法 佐賀大学, 医学部, 客員研究員 (00150441)
雨宮 三千代 公益財団法人冲中記念成人病研究所, その他部局等, 研究員 (00288101)
會田 薫 山梨大学, 総合研究部, 医学研究員 (50184015)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 糖尿病 / EMCウイルス / 再生医学 / REGⅠα / BrdU |
研究実績の概要 |
我々は、ヒトの膵島に接する腺房様細胞群(the Acinar-like cell cluster Touching Langerhans islets with Thin Interstitial Surrounding : ATLANTIS)が膵島と共通の基底膜を有して存在すること、この細胞群がβ細胞の再生促進因子であるREGIαを発現し、膵島に向かって分泌顆粒を放出すること、エンテロウイルスによる劇症1型糖尿病(FT1DM)の際にはβ細胞の再生亢進が起こる所見などを報告した (Aida K et al., PLOS ONE 9: e95110, 2014)。 平成27年度は、EMCウイルス(D strain)を感染させたREGIα欠損マウスでのβ細胞再生所見の検討を行った。具体的には、感染後14日目にはβ細胞の増殖を見るためにBrdUを投与しREGIα欠損マウスと対照群(野生型)とを比較し摘出膵のβ細胞量、BrdU陽性のβ細胞比率、REGIαの発現を検討した。その結果、REGIαの欠損マウスでは有意にBrdU値の低下がみられATLANTISのβ細胞保護効果が見られた。平成28年度は共同研究者の雨宮が膵外分泌腺細胞株であるAR45J細胞とβ細胞株であるIns-1細胞の共培養系で形態学的およびBrdU assayで両者の細胞株の関連をみた。その結果AR45JはREGIαを発現分泌し、Ins-1はREGIαを有さないがREGⅠαの受容体を有すること、両者は3μmのポアサイズの膜をとおして突起によりcommunicationしていること、共培養によりIns-1細胞はBrdU値が約2倍に増加すること、などのデータを得た。この成績は外分泌細胞株(ATLANTISに対応)とβ細胞株がcommunicationし、連携しあっていることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
EMCウイルス感染マウスでATLANTISのβ細胞増殖効果という新しい知見、さらには細胞株を用いてATLANTIS細胞とβ細胞とのcommunicationが観察されたのは大きな進歩と成果である。プロテイオミックス解析が遅れているのでこの評価となった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度以降の方針として、β細胞の増殖の評価とウイルス感染膵の形態評価を行い、論文化が第一目標である。次いで、EMCウイルス糖尿病マウスでのATLANTISにおける蛋白発現(プロテオミックス解析)の検討を行う。REGIα欠損マウスと対照マウスで、ATLANTISの変化(特に基底膜との関係、量的変化など)を形態およびプロテオミックス解析を行い比較する。Laser-capture microdissectionと質量分析器を用いて、ATLANTISに発現しているREGIα以外のβ細胞再生・保護因子を探究する。AR45JとIns-1細胞株の共培養のプロテオミックス解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
プロテオミックス解析が進行していないため次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度は、プロテオミックス解析を行ない、助成金の使用を行う予定である。
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