研究課題
1.肝臓におけるmTOR経路を活性化したRhebモデルマウスの解析;mTOR経路活性化因子Rhebアデノウイルスを用いて肝臓へ遺伝子導入したモデルマウスでは、実際に肝臓のmTOR経路の活性化が見られた。このモデルマウスでは、各種代謝パラメーターを解析した結果、全身の脂質代謝に顕著な変化を認めた。特に、食後の血清中性脂肪値の著明な上昇を認めた。このモデルマウスに、オリーブオイルを用いた脂肪酸負荷試験を行うと、対照群に比べて、オリーブオイル負荷後の血清中性脂肪の上昇度の増加を認めた。また、各組織での遺伝子発現変化の解析から、脂肪組織でのリポ蛋白リパーゼ(LPL)の遺伝子の発現低下を認めた。これらの結果を総合すると、このモデルマウス、すなわち肝臓のmTOR経路を活性化するモデルでは、血清中性脂肪の分解の抑制機構が存在するのではないかと考えられた。2.肝から神経系を介した遠隔効果が個体の代謝に及ぼす機序の解明;このモデルマウスで見られた表現型を解析するにあたり、脂肪組織でのLPLの発現変化に着目した。脂肪組織のLPLが神経系の制御を受けるのではないかと想定し、脳への求心路(迷走神経肝臓枝)の手術的切断術および薬理学的遮断を施行した。その結果、脂肪組織のLPLの遺伝子発現の変化がほぼキャンセルされることが新たに分かり、そこには新たな臓器間ネットワークの存在と関与が見られることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度の研究実績と現在の進行状況に関して、当初の研究計画書の内容に即して簡潔に記載した。現在、研究は進行中であるが、肝臓へのmTOR活性化因子Rhebを導入したモデルマウスの解析から、肝臓由来の神経ネットワークによる脂質代謝調節機構を解明した。引き続き、研究を遂行する予定である。
平成28年度は、上記に示した新たな神経ネットワーク機構の詳細なメカニズムの解明と応用法の探索を引き続き遂行する予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 図書 (2件)
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