研究課題
1.mTOR経路抑制因子の肝臓における生理的役割の検討;昨今、mTOR経路は個体の各臓器の糖・脂質・エネルギー代謝の様々な機能を担うことが解明されている。また、mTOR経路は個体としてこれらの代謝の恒常性維持に重要な役割を果たすことが考えられ、このmTOR経路を抑制する因子に着目した。まず、マウス個体の代謝関連臓器である肝臓と脂肪組織における抑制因子の遺伝子発現様式を検討した。野生型マウスと肥満マウス(食餌性肥満モデルや、レプチンの欠損する遺伝的肥満モデルであるob/obマウス)を用いて、real time RT-PCRを用いて比較解析を行った。その結果、mTOR経路抑制因子の遺伝子発現には、野生型マウスと肥満マウスとの間に変化が存在することが明らかとなった。2.mTOR経路抑制因子の遺伝子をクローニングし組換えアデノウイルスを作製し、肝へ過剰発現させる;mTOR経路抑制因子に関して、マウス肝臓cDNAから目的遺伝子をクローニングし、遺伝子組換え工学を用いてアデノウイルスを作製した。これまでの既報に従い、このアデノウイルスをマウスに対して尾静脈注射することで、マウス肝臓に選択的に過剰発現したモデルマウスを作製した。その中で、肥満モデルで過剰発現を試みた場合、肥満により活性化した肝の内因性mTOR経路が抑制されることが確認された。3.肝mTOR経路抑制による全身の糖・脂質・エネルギー代謝に与える影響の検討;現段階では、preliminaryな解析結果ではあるが、肥満モデルマウスにこのアデノウイルスを肝臓へ過剰発現した場合、対照群に比べて肥満による耐糖能異常とインスリン抵抗性への作用が認められた。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度の研究結果と現在の進行状況に関して、当初の研究計画書の内容に照らし合わせて記載した。現在、研究は進行中であるが、肝臓のmTOR経路を調節したモデルマウスの解析から、新しい代謝調節機構の存在が示唆された。今後も引き続き、研究を遂行する予定である。
平成29年度は、27年度及び28年度の研究結果を基に、新しい代謝調節機構の詳細な解明と応用を検討すべく、研究を継続する予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 4件) 図書 (1件)
Cell Reports
巻: 18 ページ: 2045-2057
10.1016/j.celrep.2017.01.076.
Gastroenterology
巻: in press ページ: in press
10.1053/j.gastro.2017.01.001.
EBioMedicine
巻: 15 ページ: 163-172
10.1016/j.ebiom.2016.12.002.
Diabetology International
巻: 7 ページ: 205-211
10.1007/s13340-016-02777-8.
糖尿病
巻: 59 ページ: 700-702
doi.org/10.11213/tonyobyo.59.700
Diabetes Frontier
巻: 27 ページ: 331-336