研究実績の概要 |
肥満に伴い内臓脂肪では慢性炎症を来すが、制御性T細胞はこれらの炎症を抑制する。雄性では肥満に伴う内臓脂肪のTreg減少が、肥満病態で慢性炎症が進展する一因とされてきた。一方、我々は雌性では逆に内臓脂肪Treg数が高脂肪食(HFD)負荷で増加すること、およびこの増加は卵巣摘出偽閉経マウスでは認められないことを見出した。さらに偽閉経HFD負荷マウスに性周期を模倣してエストロゲンを投与することで、内臓脂肪Tregの減少が認められなくなることから、雌性での脂肪組織Treg局在化にエストロゲン作用が関与することを明らかにした。 次に、作製したCD4-Cre, ERa-floxedマウス(T細胞特異的エストロゲン受容体α欠損マウス;TKO)を用いて、T細胞におけるERa欠損がHFD負荷による内臓脂肪の炎症におよぼす影響を検討した。本マウスはHFD負荷に対し、内臓脂肪のTregが減少する傾向を認めたが、内臓脂肪組織の炎症自体は軽減する傾向が認められた。また、TKOマウスは体重や体脂肪蓄積、および糖負荷・インスリン負荷試験の成績に明らかな変化を示さなかったことから、T細胞におけるERa作用がHFD負荷による肥満病態での糖代謝におよぼす影響はわずかと考えられた。 そこで、生理的にエストロゲン濃度が高まる妊娠糖尿病病態下でのTKOの表現型を解析した。現在も検討中のため、preliminaryな結果であるが、アロ妊娠ではシンジェニック妊娠と比較し、糖負荷試験の血糖が高い傾向にあることを見出した。現在TKOと対照マウスに4週間のHFD負荷ののちに交配させ、その後もHFDを給餌する妊娠糖尿病モデルを適応し、糖代謝とTregを含めたT細胞分化への影響、内臓脂肪の慢性炎症、および糖代謝への影響を検討しており、成果がまとまり次第、論文として報告予定である。
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