研究課題/領域番号 |
15K09414
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
楯谷 三四郎 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (70639260)
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研究分担者 |
田守 義和 神戸大学, 医学研究科, 客員教授 (90379397)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | インスリン抵抗性 |
研究実績の概要 |
C57BL6マウスを高脂肪食(HFD)で飼育すると8週後に肝臓慢性炎症と肝インスリン抵抗性が出現したが、それ以前の負荷4週後の時点で肝臓のeNOS-p (Ser1177)と一酸化窒素(NO)含量が低下していた。RAWマクロファージではNO供与体(DETA-NO)やcGMPアナログ(8Br-cGMP) によりLPS依存的TNFα、IL6、CD11c mRNAの増加(M1化)が抑制され、同刺激はAML12肝細胞でもパルミチン酸依存的炎症(IkBα-p)と肝インスリン抵抗性発症を抑制した。eNOS由来NOの欠損したeNOS-/-マウスは普通食飼育にも関わらずKupffer細胞のM1化と肝臓慢性炎症、肝インスリン抵抗性が出現したが、C57BL6マウスにPDE5阻害剤, sildenafilを投与しcGMP濃度を増加させるとHFDに伴うKupffer細胞のM1化と肝インスリン抵抗性が改善した。NO/cGMPの下流分子VASPをRAWマクロファージ、AML12肝細胞で各々過剰発現させるとNO/cGMPと同様に抗炎症インスリン抵抗性改善作用がみられVASP-/-腹腔マクロファージ、VASP-/-初代肝細胞は非刺激下にも関わらず炎症とインスリン抵抗性がそれぞれ誘導されていた。Kupffer細胞の M1化と肝インスリン抵抗性は普通食飼育下のVASP-/-マウスならびに骨髄移植にて樹立した骨髄特異的VASP-/-マウスでも認められた。DETA-NOや8Br-cGMPによる抗炎症作用はVASP-/-腹腔マクロファージで消失し、同刺激による抗炎症作用ならびにインスリン抵抗性改善作用はVASP-/-初代肝細胞でも消失しており、この作用がVASP依存的であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
骨髄移植の手法を用い、骨髄細胞特異的にVASPを欠損させたとき、マクロファージの慢性炎症が誘導されインスリン抵抗性を発症するかどうか検討を行った。970radsの放射線を照射した野生型マウスにVASP欠損マウスより単離した骨髄由来マクロファージ (BMDM ) を移植したところ、普通食飼育にもかかわらず肝臓、脂肪組織マクロファージはTNFαの上昇など慢性炎症の状態を呈し、インスリン抵抗性を認めた。この結果の再現性を得るまでに時間がかかり、CD68プロモーターを用いマクロファージ特異的にVASPを過剰発現させるマウスを作製し、このマウスが高脂肪食飼育にても慢性炎症とインスリン抵抗性をきたしにくいかどうかを解析する実験にはまだ移行できていない。
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今後の研究の推進方策 |
CD68プロモーターの下流にVASP cDNAを挿入しレトロウィルスを用いてBMDMに導入(CD68-VASP BMDM)し、骨髄移植後のマウスに移植することで骨髄細胞特異的VASP過剰発現マウスを作製する。このマウスが高脂肪食飼育にても慢性炎症とインスリン抵抗性をきたしにくいかどうかを解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
骨髄移植実験の結果の再現性を得るまでに時間がかかり、CD68プロモーターを用いマクロファージ特異的にVASPを過剰発現させるマウスを作製し、このマウスが高脂肪食飼育にても慢性炎症とインスリン抵抗性をきたしにくいかどうかを解析する実験にはまだ移行できていない。
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次年度使用額の使用計画 |
CD68プロモーターの下流にVASP cDNAを挿入しレトロウィルスを用いてBMDMに導入(CD68-VASP BMDM)し、骨髄移植後のマウスに移植することで骨髄細胞特異的VASP過剰発現マウスを作製する。このマウスが高脂肪食飼育にても慢性炎症とインスリン抵抗性をきたしにくいかどうかを解析する。
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