研究課題
我々は、HDL代謝、特にABCA1遺伝子発現と脂肪毒性が膵β細胞に及ぼす影響について、特に細胞内情報伝達系に焦点をあて網羅的に検討してきた。膵β細胞にコレステロールを負荷し脂肪毒性を誘導し、プロテインキナーゼの発現パターンを上記のmulti-kinase抗体で検討した。Multi-PKでは、コントロールと比較して、脂肪毒性で約200kD, 150kD, 90kDバンドが強く発現され、約60kDのバンドが消失した。上記の変動を認めたバンドに関しては、質量分析法にて解析をおこない約60kDはAKTであることを同定した。以前に我々はPI3K/Akt pathwayがグルコース応答性インスリン合成を促進することを報告している。一方、細胞内情報伝達系の下流に存在する転写因子についても解析を行った。PI3K/Akt pathwayを仲介する転写因子の候補としてFoxO1が抽出できた。転写因子FoxO1は、膵β細胞において非常に強い発現を認めインスリン遺伝子やグルコキナーゼ遺伝子のプロモーターに特異的なDNA結合配列を認め,ABCA1遺伝子プロモーターにも存在することを明らかにした。膵β細胞における脂肪毒性を解除する分子ターゲットとしてABCA1が注目されているが、臨床的な役割は不明である。最近我々は、ホルモンの一つであるIGF-1がPI3K/Akt pathwayを介してABCA1遺伝子転写を促進し、インスリン分泌能を回復することを報告し、脂肪毒性解除に向けた治療法を見いだしている。 またPI3K/Akt pathway抑制によるマイクロRNA(microRNA)-33がABCA1の抑制的に制御していることが報告されている。今後、HDL代謝を賦活化するABCA1分子をターゲットとして、膵β細胞の脂肪毒性を解除する治療戦略を検討していく。
2: おおむね順調に進展している
研究結果の学会発表、論文化もできた。
細胞内情報伝達系によるmicroRNA-33の発現調節メカニズムについて明らかにし、最終的には、microRNA-33の発現抑制を目指した新規の遺伝子導入療法についてtranslational researchとして取り組む。
購入予定のものが、在庫品不足になったため、研究の進展具合に合わせて次年度での購入に先送りにした。
遺伝子工学消耗品に使用する
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
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