研究課題/領域番号 |
15K09416
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
石垣 泰 岩手医科大学, 医学部, 教授 (50375002)
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研究分担者 |
佐々木 章 岩手医科大学, 医学部, 教授 (40275540)
川崎 靖 岩手医科大学, 薬学部, 助教 (60385549)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 肥満 / 動脈硬化 / 小胞体ストレス / 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、肥満や糖尿病といった代謝異常の形成から、こうした生活習慣病の終末像である動脈硬化の形成における小胞体ストレス応答の重要性を、その調節メカニズムも含めてヒト検体で詳細に検討することである。これまで我々が動物実験で得た知見を基盤に、脂肪組織や肝臓、血管といったヒト組織での遺伝子発現解析や免疫染色を行い、生活習慣病や動脈硬化における小胞体ストレス応答の役割を明らかにし、新しい病態理解につなげていきたい。 本学の外科では着実に肥満外科手術の症例が増加し、それに応じて組織検体の蓄積も増えている。肥満・インスリン抵抗性をもっとも特徴的に体現している高度肥満者の脂肪組織を用いて、臓器の小胞体ストレス応答蛋白の発現を解析するために、H27年度は術後の標本の整理・収集から始めた。予備的に手術標本の調整とRNA抽出を行っているが、これまで経験のある肝組織標本からのtotalRNAの抽出と条件が異なるため、精度の高いRNAが得られず解析に至っていない。今後さらに条件検討を積み重ねていくことで、解析に耐えうる精度の高いRNAを得られることが期待される。 培養細胞を用いた実験として、血管内皮細胞を培養し、小胞体ストレス誘導剤Thapsigardinを添加することで内皮細胞の遺伝子発現の変化を観察している。予想通りCHOPやERO1といった小胞体ストレス応答蛋白の発現が上昇しているほか、VCAM1や酸化ストレスマーカーの発現亢進も認められている。 H28年度はヒト脂肪組織標本での遺伝子発現解析を軌道に乗せるとともに、高度肥満の病態において脂肪組織の変化が血管内皮の変化とどのように関係しているのか検討していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の進捗が当初の予定より遅れている理由として、手術標本の扱いに慣れていなかったため、実際に組織標本を実験に用いることができる状態に調整するのに時間を要したことが挙げられる。この点については、自身で検体の一部を整理することで効率よく検体の処理を行い、RNA採取の実験に供することができるようになった。 次に、標本組織からのRNA抽出のプロトコルがうまく機能しなかったことが挙げられる。以前に我々は肝臓組織標本からのRNA抽出を行い、半定量PCRに耐えうる精度のRNA抽出に成功していたが、同様の条件では十分量のRNAを採取することはできず、条件検討に多大な時間を要した。検討を重ねることでRNAの収率は向上してきており、H28年度はじめからは半定量PCRに供与できる量と精度のRNAが採取できる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
H27年度には手術標本脂肪組織からのRNA採取が不成功だったことで進捗が遅れている。しかしH28年度以降の計画は大きく変更せず、H27年度の内容もH28年度内に遂行できるよう精力的に実験を進めていきたい。 今後の課題としては、上記に示したように脂肪組織標本からのRNA抽出、さらには半定量PCRにて高度肥満脂肪組織における遺伝子発現解析を進めていくことである。並行しておこなっている培養細胞での小胞体ストレス応答に関しても、血管内皮細胞に加えて肝細胞や脂肪細胞にも対象を広げていく。仮説としては、高度肥満ヒト脂肪組織では小胞体ストレス応答、酸化ストレス応答が亢進しており、こうした変化が他臓器にも影響を及ぼしていることを培養細胞での結果と結び付けていければと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
ヒト手術標本からのRNA抽出の条件検討に多大な時間を要ししたため、その後に予定していた半定量PCRに検討を進めることができなかった。このため遺伝子解析の予算を消費できず、次年度に繰り越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
H28年度は十分量と精度のRNAを抽出することで、遺伝子解析の検討を精力的に進めていく予定である。半定量PCRを始めとする解析に、前年度繰り越した分と今年度の助成金を合わせて使用していきたいと計画している。
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